【税理士の開業に関する実態調査】約7割の事務所が顧問先数5件以下でスタート

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税理士事務所に勤務している方の中には、将来は開業税理士として活躍することを目標にしている方も少なくないと思います。ただ、税理士になることでさえ大変なのに、独立開業となるとさらに高いハードルを超えなくてはなりません。

独立開業の道を選んだ先輩たちは、スタート時点で何件の顧問先を持ち、何年でどのくらいまでその数を増やしているのでしょうか?また、どのような方法で顧問先を開拓しているのでしょうか?

ここではMikatus(ミカタス)株式会社が2021年5月に実施した「税理士の開業に関する実態調査」の結果の一部を示しながら、独立開業の実態についてご紹介します。

開業税理士の3割が100件以上の顧問先を持つ

まずは現在の事務所の規模について聞いてみました。

Q.現在、事務所は何人体制ですか?

独立開業実態調査グラフ01

独立開業した税理士の6割以上が、3名以下の事務所であることがわかります。また開業してから3年未満の事務所の4分3以上が一人で運営しています。開業してからの期間が長くなるほど事務所の規模が拡大しており、10年以上経過している事務所の約6割は4名以上の規模となっています。

次に、現在の顧問先数と、独立開業した時点での顧問先数について尋ねました。

Q.現在の契約顧問先は何件ですか?

独立開業実態調査グラフ10

Q.開業時点で顧問先は何件ありましたか?

独立開業実態調査グラフ11

開業税理士の約30%が100件以上の顧問先を抱えている一方で、開業してから3年未満の事務所の半数以上が、顧問先数が10件以下であることがわかります。

他方では、7割近くの事務所が顧問先5件以下で開業していること、最近開業した事務所ほど顧問先数が少ない状態で開業している傾向があることがわかります。またベテラン(50歳以上)のほうが開業時点での顧問先数が少ない傾向があります。これについては、税務署OBの税理士が開業するケースである可能性があります。

続いて、事務所が軌道に乗ったと思うタイミングについて聞いてみました。

Q.開業してから事務所の運営が軌道に乗り始めたのはいつ頃からですか?

独立開業実態調査グラフ03

事務所の運営が軌道に乗り始めた時期については、半年~1年が30%と最も多く、3か月以内が17%、3か月~半年が8%という結果に。半分以上の事務所が一年以内に軌道に乗り始めていることがわかりました。

一方、未だ軌道に乗っていないという回答も20%を超えており、特に開業してからの期間が3年未満の事務所の場合、約6割が軌道に乗っていないとの回答でした。このことからも、開業してから、いかに短期間で事務所運営を軌道に乗せるかがポイントになりそうです。軌道に乗った税理士の話は、以下のリンクからご覧いただけます。

>>税理士アンケートから見えた人材育成へのヒント

新規顧客開拓の多くは既存の顧問先からの紹介

ここで角度を変えて、事務所の営業方法について尋ねてみました。

Q.主な営業方法は?

独立開業実態調査グラフ12

開業してからの期間や地域、年齢に関わらず、紹介による顧問先獲得が最も一般的であり、約2割の開業税理士が営業活動を行っていないと回答しました。またホームページからの問い合わせは、開業からの期間が長い事務所ほど、またベテランになるほど活用していることがわかります。

Web広告については、都市部や、開業して間もない税理士が多く活用しているほか、地方やベテランのほうが積極的に飛び込み営業を実施している傾向があります。

次に、顧問先の紹介元についても聞いてみました。

Q.主にどこから紹介を受けていますか?

独立開業実態調査グラフ13

地域や年齢を問わず、顧問先からの紹介による顧客獲得が最も一般的であり、開業期間が長くなるほど紹介の数が増加する傾向が見て取れます。

また、開業して間もない事務所は顧問先からの紹介よりも士業仲間からの紹介が多いほか、開業して間もない事務所のほうが紹介業者の利用に積極的であることがわかります。数は少ないのですが、会計ベンダーからの紹介と答えた事務所もあります。

若手ほど経営支援サービスに取り組んでいる

次に、開業時に提供していたサービスについて聞いてみました。

Q.開業時点で提供していたサービスを教えてください。

独立開業実態調査グラフ14

開業期間が短いほど、税務相談や申告業務のサービスを提供しない事務所が増加していており、特に記帳代行は提供しない傾向が強いことがわかります。

一方で、開業時点で経営支援サービスを提供する事務所は全体でも半分弱、資金繰り対策は3分の1程度にとどまっています。若手の事務所は経営相談や資金繰り対策に力を入れ、開業時点から提供しているところが多いのも特筆すべき特徴と言えます。

先ほどの質問で「70%近くの事務所が顧問先5件以下で開業している」ことがわかりましたが、当時の顧問先はどうやって獲得したのかについても聞いてみました。

Q.開業時の顧問先はどういった経緯で獲得されましたか?

独立開業実態調査グラフ07

「以前の職場から顧問先を引き継いだ」(58.1%)と答えた方が最も多く、次いで「開業前に知人などに声をかけていた」と「紹介を受けた」が16.9%で並びます。地域や年齢による回答の傾向に大きな差異は見られません。

クラウド型のサービスが支持を集めている

開業した時点で使っていた税務・会計システム(サービス)についても伺いました。

Q.開業当時、税務・会計システムはどちらのベンダーを採用しましたか?

独立開業実態調査グラフ15

上位は弥生、A-SaaS、JDL、TKCと続きます。

次に、これらのシステム(サービス)を選んだ際に何をポイントにしたかについても聞いてみました。

Q.税務・会計システムを選定する上でこだわりがあれば教えてください。

独立開業実態調査グラフ17

ベテランや開業期間が長い事務所のほうが、機能面に対するこだわりが強いという結果になりました。また半数以上が価格面を重視しており、特に年齢別ではベテラン、開業期間では開業間もない事務所が低価格のシステム(サービス)を求めていることがわかります。

さらに半数以上の税理士がクラウド型のサービスを好み、開業期間が3~10年の事務所では約3分の2がクラウド型サービスを選んでいます。

まとめ

以上、「税理士の独立開業に関する実態調査」の結果の一部を示しながら、独立開業の実態についてご紹介しました。

多くの顧問先を抱えた状態で開業した事務所は少数派で、7割近くの税理士が5件以下の状態からスタートしています。そして既存の顧問先からの紹介を中心として顧客を開拓し、試行錯誤しながら事務所の規模拡大に努めていることがわかります。

本レポートが、これから独立開業を考えている方の参考になれば幸いです。

※ Mikatus株式会社は2022年9月30日をもちまして、当社の完全親会社であるfreee株式会社と合併いたしました。

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