高次元の二刀流、150件の顧問先に愛を届ける「歌う税理士」

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伊原裕伸(ゆしん)さん(甲南会計事務所、いい税理士協会認定 上級会員)は現在、税理士として約150件の顧問先を担当する一方で、シンガーソングライターとして精力的にライブ活動を展開しています。一見すると性格の異なる二つの仕事に全力を注ぐ伊原さんは、「音楽活動と税理士業務には大きな共通点があります」と語ります。その真意とは一体どんなものなのでしょうか?話を伺いました。

お話をうかがった人:甲南会計事務所/伊原裕伸さん
2002年、京都大学卒業後、音楽一本の生活に。ようやく音楽で食べられるようになったところで身内の大病により、税理士の世界へ。税理士とシンガーソングライターの二足の草鞋を履くが、どちらも根本は「ラブ&ピース」。「幸せ」を追求することが本当の意味での成功につながると、中小企業を全力支援。税理士としての信条は「専門家の友人」として、出会ったあなたを支えたい!シンガーソングライターとしては「ゆしん」のアーティストネームで活動。ニューアルバム「賛否両論」が発売中。
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音楽活動が「愛」を教えてくれた

2001年にロックバンドを結成して以来、20年にわたりミュージックシーンを彩り、コアなファンから愛されてきた伊原さん。税理士になった今でもライブ活動を継続し、取材の前日にもライブ動画を配信したばかり。そんな伊原さんは、シンガーソングライターとしての活動が税理士業務にもプラスに働いていると言います。

伊原さん丸アイコン伊 原
すべての歌は、何かに対するラブソングだと思っています。異性に対する愛だけでなく、世界に対する愛だったり、仲間に対する愛だったり。音楽から学んだ愛を届けるという行為は、まさに税理士にとって必要不可欠なものだと思います。

伊原さんが所属する甲南会計事務所は、実の母が代表を務める事務所です。在日韓国人である母の百合枝さんは、税理士としても本名の尹(ユン)姓を名乗ったこともあり、開業当初は在日韓国人のコミュニティから熱烈な支持を受けたと言います。

その後、日本人の顧問先も増やしていき、最盛期には300件近い顧問先を獲得した百合枝さんでしたが、2009年に病に倒れ一時的に職務を離れることに。その状況を見かね、同時に女手一つで育ててくれた母に今こそ恩返しをすべき時だと感じた伊原さんは、30歳にして税理士試験の勉強を始め、わずか三年で資格を取得。別の事務所での勤務を経て2015年に母の事務所に合流します。

税理士試験の勉強に打ち込むため音楽活動を休止したものの、やはり音楽に対する想いも捨てきれず、シンガーソングライターとして楽曲の制作やライブ活動を続行。伊原さんは睡眠時間を削ることで、二刀流を地で行く決意を固めたのです。

税理士の仕事は可能性に満ちあふれている

そんな伊原さんの税理士としてのポリシーは「好きな人を愛し抜く」という言葉に集約されます。

世の中にある多くの仕事は、業務内容とその対価が決められています。税理士事務所も例外ではありません。それでも伊原さんは「税理士の仕事は、音楽と一緒で『ラブ&ピース』でいいんだと思っています」と話します。

伊原さん丸アイコン伊 原
過去に顧問先の社長さんが精神的に病んでしまったことがあります。人がいちばん苦しんでいる時に助けになるのが僕の役目ではないかと思い、その方を音楽スタジオにお連れして、気晴らしに好きな歌を歌ってもらったんです。そんなことを続けているうちに社長さんが徐々に回復され、それに伴って会社の業績もどんどん良くなりました。その時に、金勘定だけが税理士の仕事ではないなと思ったんです。

自分に関わるすべての人を笑顔にしたい――。税理士としてもシンガーソングライターとしても、伊原さんの想いは一貫しています。

伊原さん丸アイコン伊 原
助けられるものは助けたいし、支えられるものは支えたいんです。経営者の方と一緒に事業の方向性を考えたりする時も、本人だけでなくご家族や社員のみなさんも含め、関わるすべての人を笑顔にしたいと思っています。こういう発想を持つと、税理士にはやれることがものすごくたくさんあるんです。

そう語る伊原さんには、ミュージックシーンでの活躍と同様に、ビジネスシーンにおいても大きな成功を掴んだ経験があります。

例えば食品を扱うメーカーが公的な補助金を申請しようとした時、伊原さんはメーカーの経営者や担当者と一緒になって新商品開発のアイデアを練ったそうです。その結果、補助金を元手に、独身の若者や単身の高齢者などに向けて、小分けにした一つ一つのパッケージで違う味が楽しめる画期的な冷凍食品を開発。若者や高齢者はもちろん幅広い世代から支持を集め、予想を超えるスマッシュヒットを記録しました。

メーカーの経営者や担当者だけでなく、その家族や他の社員、そして消費者も含めて「関わるすべての人を笑顔にしたい」という想いを実現したのです。

経営者の気持ち次第でビジネスの展望は変わる

伊原さんは顧問先について「僕が付き合いたいと思う方とだけ仕事をするようにしています」と語ります。

そのため半年から長ければ2年ほどの時間をかけて、料金をもらわずにサービスを提供する“お見合い期間”を設け、お互いに納得したうえで正式契約を結ぶかたちを取っています。

伊原さん丸アイコン伊 原
僕はこんな奴ですよ、というのをお客さんには最初にお話します。メールには顔文字をたくさん使いますよ、スーツは着ませんよ、シンガーソングライターもやっていますよ、しゃべり方はのんびりしていますよ、というのを隠さずにすべてお伝えします。気に入ってもらえなければ縁がなかったということですし、気に入ってもらえれば「最もそばにいる親友」としてベストを尽くしていきます。

ゆったりとした独特のテンポでそう語る伊原さんは、いわゆる一般的な税理士のイメージを覆す独特な個性を身にまとっています。一人で約150件の顧問先を抱え、音楽活動も並行する多忙な生活についても、「好きな人たちに囲まれるのは素直にうれしいです」と笑顔で話します。

伊原さんは、顧問先の経営者と話をする時、特に厳しい数字の話をする時は努めて明るく伝えるように心がけているそうです。事務的に話しても明るく話しても状況は変わりませんが、経営者の気持ち次第で事業の展望が変わっていくことは少なくないからだと言います。

伊原さん丸アイコン伊 原
例えば月々の経費を抑えてくださいという話をした時に、嫌々やる社長さんと意気込んでやる社長さんでは、まったく違う結果になります。他にも、製造業の社長さんに対して商品の値上げ交渉をしましょうという話をした際に、社長さんが本気になってくれたおかげで、値上げに成功して利益率が改善したこともあります。その時は単純に価格を上げるのではなく、きちんとブランディングすることで利幅が上がるかたちで単価を設定するお手伝いができました。いずれにせよ、社長さんの気持ちを「上げる」ことはとても大事なんです。

1mmでも未来が良くなるよう努力する

音楽活動と税理士活動の共通点について、伊原さんは独自の考え方を持っており、二つの仕事は非常に親和性が高いと言います。

伊原さん丸アイコン伊 原
世間が美しいと決めたものだけが美しいのではなく、美しくないとされるものの中にも美しさはあります。美しくないものも含めて愛していこうという想いを突き詰めていった先に歌という表現があるんだと思っています。1mmでも未来が良くなるよう、メッセージを込めて歌うんです。税理士も同じです。人と人との付き合いを突き詰めていき、1mmでも未来が良くなるよう努力するんです。税理士として人のあかん部分も含めて愛していくという行為は、楽曲創りと共通していると思います。歌のおかげで税理士業ができていますし、税理士業のおかげでできた歌もたくさんあります。

音楽活動と通常の税理士活動に加え、この一年半はコロナ対策に追われ「死ぬかと思うほど忙しかったです」と語る伊原さん。1日90分の睡眠時間を確保するのがやっとだった時期もあったとか。それでも、どちらの活動にも全力投球してきたおかげで、シンガーソングライターとしての伊原さんの熱烈なファンになった顧問先も少なくないそうです。高次元の二刀流を全力で続ける伊原さんに、休む暇は当分なさそうです。

*  *  *

音楽に乗せて「ラブ&ピース」のメッセージを届ける伊原さん。このメッセージを基軸として税理士活動を展開する、志を同じくする仲間を増やしていきたいという夢も語ってくれました。伊原さんの考えに共鳴する税理士が増えてくると、活力のある中小企業で溢れる日本の未来が見えてくるのかもしれません。

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