【セミナーレポート】揺るぎない顧客基盤を作る!「いい税理士」の顧客獲得ルートの作り方

いい税理士協会は5月26日、「独立開業には強い顧客基盤が欠かせない!『いい税理士』の顧客獲得ルートの作り方」と題したオンラインセミナーを開催しました。
セミナーには、協会が認定する「いい税理士」で株式会社start-with/荻島会計事務所の代表を務める荻島宏之さんが登壇。9年前の開業以来、順調に事務所の規模を拡大させてきた荻島さんだからこそ話せる顧客獲得におけるポイントを紹介しました。この記事では、荻島さんご自身の言葉でセミナーの内容を振り返ります。
出会いは待っていてもやって来ない
顧客を獲得したいと思っている税理士と、税理士を探している顧客がいるとします。この場合、二人が運命の交差点で出会うべくして出会える仕組みをどれだけ作れるかが大切です。
税理士である我々が顧客を探しているのと同じように、顧客は「いい税理士」はどこにいるんだろうと思っています。まずは、どのような顧客を獲得したいのかを考えること、そして顧客はどのようにして税理士を探すのかを考えること。この二つを結びつけることが重要です。
目的やリソースが違えば手段が違う
例えば私の住む埼玉県から、富士山を目指す場合と近所のコンビニを目指す場合では、当然ながら移動手段が異なります。富士山を目指すなら電車に乗るでしょう。しかしお金というリソースがまったくなければ電車は使えません。それでも富士山を目指すという目的を達成したいのであれば、自分の足で歩いていくことになります。つまり目的によって手段は変わり、リソースによっても手段は変わってくるのです。
これを税理士における顧問先獲得に結びつけて考えると、目的は「獲得したい顧客」、手段は「獲得ルート」、リソースは「方法」に置き換えられます。獲得したい顧客によって、作るべき獲得ルートが変わってくるし、使える方法によっても獲得ルートが変わってくるのです。
目的、すなわち「どのような顧客を獲得したいのか」を考える場合、①どのような顧客に対して、②どんな価値を提供したいのか、という二つの点をあわせて考える必要があります。
①については、業種や地域、業歴、会社の規模、経営者の性格や志向などがあります。これらをイメージすることで、理想とする顧客像を明確にするのです。
②については、専門である税務をきちんとやっていきたいとか、顧客の事務の負担を軽減にするために経理を代行するとか、融資や補助金の相談に乗るとか、経営計画を一緒に作っていくとか、色々なことが考えられます。
①と②を考える際、どこを狙えば競合が少ないか、といった外部要因も関係してきますが、せっかく独立開業するのなら、まずは自分が何を目指すのか、誰にどんな価値を提供することで稼いでいきたいのかを考えることが大切です。
例えば僕が開業した際には、①については起業予備軍や起業したばかりの方を応援したいと考えました。
その方たちに税務以外で三つの価値を提供することで貢献したいと考えたのです。三つの価値とは「創業融資」「事業計画」「経理代行」です。
起業予備軍や起業して間もない方に出会うにはどんな手段があるかと言うと、次のものなどが考えられます。
- 起業スクールとの関係性を構築する
- インターネットなどで設立直後の顧客を調べ、ダイレクトメールを送る
- 異業種交流会に出席する
一方で、価値を提供するための手段として僕が行ったのは次のことです。
- 日本政策金融公庫や信用金庫などとの関係性を構築する
- 経理代行のためにクラウド会計を導入する
ちなみにクラウド会計については、会計・給与・税務を一元的に取り扱えるシステムとしてA-SaaSというものを選びました。データ連携がシームレスにできる点が良かったと思います。
いずれにせよ、ホームページに載せるコンテンツや、パンフレットとかダイレクトメールの文面などで「何でもできます」と謳っても、読み手には響きません。
僕の場合はそうではなく、目的、すなわち自分たちがターゲットとするお客様に合わせる形で訴求していきました。具体的には、そもそも株式会社start-withという僕らの社名からして「一緒にスタートを切る」というメッセージが込められています。税務で言うと相続などにもビジネスチャンスがあることはわかっていましたが、起業予備軍や起業したばかりの人だけに刺さればいいという思いで、税務や相続は捨てて、その点だけを猛烈にアピールしたんです。
顧客はどうやって税理士を探すのか
一方、顧客は顧客で自分のニーズに合った信頼できる税理士を見つけたいと考えています。税金の手続きをとにかくきっちりやってほしいとか、帳簿づけを正確にやってほしいとか、経営の相談に乗ってほしいとか理由は色々です。
そうした顧客が税理士を探す方法としては、例えば経営者仲間からの紹介やインターネットでの検索、その税理士が開催するセミナーへの参加など様々なものが考えられます。
ここで「自分の狙った顧客がどう動くのか」を考えることが大切です。税理士が作るルートと顧客が作るルートが交差しなければ、両者は出会えません。そのために顧客の動きを把握する必要があるのです。
僕らがターゲットとする起業したての経営者は次の方法で税理士を探すのではないかという仮説を立てました。
- 経営者からの紹介
- セミナーに参加する
- 友人・知人・家族からの紹介
- 異業種交流会に参加する
- 銀行や保険会社からの紹介
リソースの話で言うと、僕らも開業したてで資金が潤沢にあるわけではなかったので、価格面での勝負はできませんでした。起業したばかりの経営者はインターネットで検索する方が多いと思うのですが、インターネットに注力している事務所には太刀打ちできないことは明らかなので、そこでは戦わない決断をしました。
紹介を加速させる三つのポイント
僕らは既存のお客様から別のお客様を紹介していただくことを基本スタンスとして考えていたのですが、事務所の経営基盤を強化する意味で、別のルートを作っておきたいという思いもありました。
別のルートとして選んだのは「誰かからの紹介」です。資金が少ないこともあり、道端でいきなり出会うのではなく、「僕らはこうしたことをやりたい」と知っていただいたうえでお客様にお会いしたかったからです。
紹介いただく際のポイントは三つあると思います。
- ギブ&テイクではなくギブ&ギブ
- 自分が紹介先ランキングで1位になれそうな相手に力を注ぐ
- 一つのルートから来る顧客はそもそも少ない
1.についてはギブ&テイクの関係が基本ではあるものの、時間軸を長めに取って、まずは自分が相手に対してどれだけギブできるか、テイクについては例えば5年後でもいいというふうに考えました。
2.については、例えば紹介元が銀行員ならその銀行員にとってのナンバーワンになれそうなところに注力するという考え方です。銀行員はベテランになるほど紹介先の税理士が増え、僕はワン・オブ・ゼムに過ぎません。それよりも特に若手の銀行員にとってのナンバーワンになることが大切です。
3.については、例えば一つの銀行からは年に1件紹介がもらえれば御の字だというスタンスでルートを構築していく必要があります。年に1件のルートをどれだけ多く作っておくかが、獲得基盤を安定させるうえで重要なのです。
* * *
この他にも金融機関や保険会社にルートを作る際の注意点や、司法書士や社労士といった士業間連携におけるポイント、ルートを作る際に紹介してもらいやすくする工夫などについても言及した荻島さん。満足度100%という中身の濃いセミナーになりました。
いい税理士協会では今後も実践的な内容のセミナーを順次、開催していく予定です。ぜひご期待ください。
※ いい税理士協会は2022年7月をもちまして解散しました。
※ Mikatus株式会社は2022年9月30日をもちまして、当社の完全親会社であるfreee株式会社と合併いたしました。
この記事をシェアする