税理士の仕事の魅力とは?目指すうえで知っておきたいやりがいを解説

税理士を目指す人の中には、税の専門家として社会に貢献することにやりがいを感じる方がいらっしゃると思います。しかし税理士のやりがいはそれだけではありません。時には資金繰りなどの財務面から企業をサポートしたり、経営面から企業を支援することもあります。この記事ではこれから税理士を目指す人に向けて税理士の仕事のやりがいや大変な点、実際に活躍している人の感想をご紹介します。

税理士として仕事をするやりがいとは?

税理士は一般の人が日常生活において接することが少ない職業の一つです。そのため、税理士として働くことのやりがいがどういう点にあるのか、よく分からないという方も少なくないでしょう。そこで、まずは税理士として働くことのやりがいについて解説していきます。

税の専門家として社会に貢献できる

税理士の仕事は国民の三大義務の一つである納税をサポートすること。税に関する法律は毎年新たに創設・改正されるため、納税者がその内容を把握し続けることはとても困難です。そこで、税の専門家である税理士がそれらの法律を読み解き、人々に正しい納税を促すことで、社会貢献に寄与しているのです。

会社の発展を財務面から支えられる

中小企業の経営者のなかには売上を重視するあまり、会社の資金繰りまで見きれていないという方も珍しくありません。個人事業主の中には「そもそも資金繰りって何なの?」という方もおり、お金の流れを把握していないことから、財務面で様々な問題を抱えている場合があります。

税理士の仕事は、そうした経営者に代わって会社の資産状況を把握し、必要に応じて資金の調達を手伝ったり、収益構造のアドバイスをすることで企業の健全な発展をサポートしていくことでもあります。

「税理士といえば、単なる税金の計算役」というイメージは過去のもの。現在の税理士は企業の税務から財務・経営を丸ごと支えるビジネスパートナーといえる存在なのです。

税理士資格を取得する魅力とは?

数ある国家資格のなかでも特に難関として知られる税理士試験は、合格までに長年にわたる努力が必要となります。勉強の途中で何のために受験をしているのかを忘れないためにも、ここでは税理士資格を取得することの魅力について改めて解説します。

他業種と比較すると高収入である

税理士は高収入が期待できる職業でもあります。

厚生労働省が令和元年度に実施した「令和元年賃金構造基本統計調査」によれば、企業規模10人以上の「公認会計士および税理士」の平均年収は約684万円となっています。

また、平成26年に日本税理士会連合会が実施した「第6回税理士実態調査報告書」ではさらに詳しい年収の区分が発表されており、補助税理士597万円、社員税理士886万円、開業税理士744万円となっています。令和2年度に国税庁の実施した「令和2年分民間給与実態統計調査結果」によれば、会社員の平均給与は433万円となっているので、税理士が高収入の仕事であることがうかがえます。なお、ここでは調査元の表記に倣い、所属税理士を補助税理士と表記しています。

60歳を超えても仕事を続けられる

日本税理士会連合会の実施した「第6回税理士実態調査報告書」によると、税理士の年齢割合は60代以上が過半数を占めています。特に独立・開業をした税理士には定年退職がないため、80代・90代になっても現役で仕事を続けている税理士も珍しくありません。

そのため、長くキャリアを形成していきたい方にとって税理士は理想の仕事の一つといえるでしょう。
税理士の仕事の魅力とは?目指すうえで知っておきたいやりがいを解説のグラフ

出典:日本税理士会連合会「第6回税理士実態調査報告書」

独立・開業ができる

税理士は経験を積むことで独立・開業ができる職業でもあります。

基本的に企業は顧問契約を結んだ税理士を後から変更することはほとんどないので、顧問先を開拓し良好な関係を築くことができれば、安定した収入を得られる可能性があります。勤務年数や学歴によって所得が左右されることもなくなるため、自分の頑張り次第で大きな成功を収められる可能性があります。

また、平成26年4月に実施された税理士法改正によって所属税理士でも代表者の承諾を得れば、自ら委嘱を受けて税理士業務に従事できるようになりました。これにより、所属税理士として働きながら自分の顧問先を増やすことができるようになったため、以前より独立・開業に向けての準備を進めやすい環境が整っています。

上場支援やM&Aを手掛けることもできる

税理士事務所には大きく分けて2つの事務所が存在します。従来業務である税務顧問サービスを提供している事務所と、専門的な分野に特化した事務所です。

税務顧問サービスを提供している事務所が、記帳代行や確定申告などの業務が中心であるのに対し、専門的な分野に特化した事務所では、株式上場支援、国際税務など、各事務所ごとに専門的な業務を取り扱っています。

また、税務顧問サービスを提供している事務所の中には専門的な業務を部分的に扱っているところもあるため、自分に合った事務所を探すことがキャリア形成に繋がります。

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税理士として働くうえで大変なこと

税理士として仕事をすることは楽なことばかりではありません。ここでは税理士ならではの大変な点について解説していきます。

税理士の繁忙期

税理士は年末調整の準備が始まる11月ごろから、多くの法人決算が重なる5月ごろにかけて繁忙期になります。2020年11月にMikatus株式会社がおこなった「税理士業界における人材・採用・教育に関する実態調査」によると、約23%もの税理士事務所が繁忙期の1ヶ月あたりの残業時間が80時間を超えていると回答しています。短い期間内で膨大な数の資料を作成しなければならないため、繁忙期を見据えて従来業務の効率化を進めることも求められます。

高い正確性が求められる

税理士は常に高い正確性が求められる仕事です。基本的な計算間違いはもちろん、勘定科目の間違いや適用される税率の間違いが一か所あるだけでも書類に不備があると見なされるため、常に高い正確性が求められる仕事であることを押さえておきましょう。

常に知識のアップデートが必要になる

税に関する制度は毎年変更があるため、税理士は常に知識をアップデートしていく必要があります。例えば、令和2年には「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置」として「欠損金の繰戻しによる還付の特例」や「住宅ローン控除の適用要件の弾力化」、「消費税の課税選択の変更に係る特例」などが講じられています。

税理士にはそれぞれの内容について正しく理解し、適用していくことが求められるため、常に知識のアップデートが必要になることを押さえておきましょう。

税理士業界は過渡期!今後の税理士に求められることとは?

厳密なルールの下で書類を作成していく税理士の業務はAIとの相性がとても良く、将来的にはAIに仕事の一部を代替される職業であるといわれています。

現在でもクラウド型の会計ソフトには銀行口座やクレジットカードの利用明細の自動取り込みや自動仕訳機能が搭載されており、税理士事務所の収益の柱の一つである記帳代行なども代替されていくと予想されています。

今後の税理士にはAIで代替することのできない財務支援や経営支援など付加価値の高いサービスの提供が求められると考えられています。

実際に税理士として活動している人の感想

税理士として自分がどのような仕事をしたいのかを知るためには、実際に活躍している人の感想や意見を知るのが近道です。そこで、ここでは税理士として実際に活躍している人の感想をご紹介します。

Q1.松尾さんは税理士としてどのようなお仕事をされているのでしょうか?

中小企業の経営支援をしています。

まずは足元の資金繰りを調えるために銀行からの借り入れなどが必要ですが、本質的に資金繰りを改善するためには、本業を改善しなければなりません。そのためには数字の裏側にある経営まで踏み込む必要があるので、業績が伸びていくような事業計画を社長と一緒に考えるのが私の役目です。

Q2.松尾さんから見て税理士の仕事のやりがいとは何でしょうか?

会社の転換点を作れることです。

例えば、私が担当しているお客様のなかには社長がワンマンでやっているため、次世代の社員が育たないと悩んでおられる方もおられる会社がありました。そこで私が経営会議に参加して社員のみなさんが経営意識を持つための提案をしたんです。すると、個々人の意識が徐々に変わっていき、社長に「良いきっかけをありがとう」と感謝の言葉をいただけました。

大げさな言い方かもしれませんが、もし何もせずにいたら社長と次代の幹部層との距離が開いたまま、社長が辞めるタイミングを迎え、引継ぎもうまくいかなかったでしょう。その意味で会社の転換点を作れたという自負があります。

松尾さんのインタビューの詳細は下記のリンクからご覧いただけます。

まとめ

どういった点をやりがいと感じるのかには個人差がありますが、企業の資金調達をサポートしたり、国際税務などの分野を手掛けられる点は税理士ならではのやりがいや魅力といえるでしょう。

高収入が期待できる点や独立・開業ができる点、定年を気にせず働ける点なども考慮すれば、十分に目指す価値のある資格です。

税理士業界はAIの台頭に伴い、現在、過渡期にあります。今後の税理士にはAIで代替することのできない分野での貢献が求められることを念頭に自分の専門分野を深めていくことが求めらるでしょう。

※ Mikatus株式会社は2022年9月30日をもちまして、当社の完全親会社であるfreee株式会社と合併いたしました。

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