30歳で独立開業の会計士が3日に一度の靴磨きを"つづける"理由

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さすてな経営会計事務所 代表 伊藤央真さん

大手監査法人を退職後、税理士法人勤務を経て、2021年7月に自身が代表を務める「さすてな経営会計事務所」を開業した伊藤央真(てるまさ)さん。

公認会計士でありながら税理士業務に軸足を置く伊藤さんは、今後、ニーズが高まることを予想して相続に強みを持つ税理士法人で経験を積み、開業に至ります。

そんな伊藤さんに仕事に対するこだわりや、他事務所との差別化におけるポイントを伺います。

お話をうかがった方:さすてな経営会計事務所 伊藤央真さん
兵庫県淡路島生まれ。関西学院大学卒業後、同大学院経営戦略研究科に1年間通った後に大手監査法人に入所し、公認会計士業務に従事。その後、大手税理士法人にて資産家向けの相続税などを中心に税理士業務を経験後、大阪市中央区に「さすてな経営会計事務所」を開業。
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"つづける"ことに込めた願い

学生の頃から経営に興味を持ち、「いつか起業してみたい」と考える一方で、保守的な性格でもあったという伊藤央真さん。

高校生の頃に出会った公認会計士の話に心を動かされたのが、この業界に入った直接のきっかけになります。

公認会計士業務や税理士業務を通じて多くの起業家や経営者と関わる中で、「10年、20年と経営を身近で支えられる存在になりたい」との想いが強くなり、30歳の若さにして2021年7月、独立開業の道を選択します。

伊 藤
さすてな経営会計事務所という屋号は、「サステナブル(持続可能)な未来を共創したい」との想いで名づけたものです。

日本では創業から10年続く会社は1割に満たない、と言われています。すなわち9割以上の会社が10年を超えて生き残ることができないのです。その理由の一つとしてお金の問題が大きく関係している、と伊藤さんは指摘します。

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極端な話、たとえ赤字経営を続けていたとしても、お金があれば会社は潰れません。逆に黒字経営をしていても、お金がなければ潰れてしまいます。その原因を探るには会計の知識が必要です。財務、会計、税務の知識と経験で「持続可能な安心づくり」をサポートするのが私の役目だと思っています。

また経営支援だけでなく個人の相続税に力を入れているのも、事務所の特徴の一つだと伊藤さんは話します。相続税の負担が大きな日本では、税金対策を何もしないと「三代で財産がなくなる」と言われます。相続税についても、事前に知っておくだけで財産を守れることがあるのです。

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法人・個人を問わず、大切な方の経営や財産承継が"つづく"ことで、仮に困難なことがあったとしても未来に希望を探すことができます。その一助となるようなサポートを仕事にしたい、との想いで事務所を開設したんです。
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海外の未上場株式の相続に成功

個人の財産承継について、伊藤さんは前職である大手税理士法人の時代にこんな経験をしています。

ある時、相続税の申告に関する相談で、海外の未上場企業のオーナーが伊藤さんのもとを訪れます。亡くなった夫が株主だったのですが、相続人である妻は海外のことや事業のことにはノータッチ。

特殊なケースで、大手と言えども事務所内でも経験をした人がいないため、伊藤さんが現地法人や現地の税務当局などと連携しながら事を進めることに。

伊藤さんは特別、英語が得意なわけではないと言います。実際、この時も流暢に英語を話したのではなく、わからない表現は調べながらメールを中心にコミュニケーションを図ったそうです。

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時には直接、現地法人や現地の税務当局に国際電話をかけ、カタコトの日本語を話す担当者と何とか意思疎通を図るなど、非常に苦労した案件でした。現地の会計士にも連絡を取り、英文のメールで調整。国内では法務局や領事館にも確認しながら手続きを進め、現地での納税や名義変更などを滞りなく完了できました。

手続き完了後、相続した株式の売却についても、現地の法人と価格交渉をするなどアフターフォローを行い、売価も希望水準を確保するまで伴走したという伊藤さん。

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思い返してみると、監査法人で会計士の業務経験を積んだことで、このような答えを持ち合わせていない仕事でも、関係者をまとめながらベストプラクティスを探る能力がついていたのかもしれません。すべての決着がついた後、「伊藤先生にお願いしてよかった」と喜んでいただいたことが印象に残っています。
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会計士が税務を学ぶ意味

会計士が開業するには、大きく二つのパターンがあります。一つは監査法人に勤めてある程度経験を積み、そのまま開業するパターン。もう一つは監査法人を経て税理士業務を経験したうえで、税理士の仕事に比重を置きながら開業するパターン。伊藤さんは後者に当たります。

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お金の面だけを見ると、例えば1日働いた時にもらえる報酬などは会計士業務のほうが圧倒的に高いのですが、働き方の面を見ると、監査法人で非常勤で働くとか、誰かの下請けに入る形が多くなります。せっかく開業したのに、他の誰かの敷いたレールの上を歩くのは嫌だな、と思い監査法人を辞したあと、相続に強みのある税理士法人に勤めたんです。

私の見たところでは、税理士業務の経験を積んでいない会計士さんたちは、どちらかと言うと自らオーナーシップを持った業務の割合が少ないように感じます。自分がオーナーシップを持ちたいのであれば、税理士業務を経験することが大切で、その中でもマーケットが今後大きくなる相続を学ぶことはアドバンテージにつながると思います。いずれにせよ何か一つ強みを持つことは大切です。

大手監査法人を辞したあと、税理士法人で2年間、相続や事業承継を中心に学んだうえで独立開業を果たした伊藤さん。「創業期のお客様や小規模ながらがんばっている中小企業の仲間になれるのは税理士の仕事で、自分にはそっちのほうが合っていた」と話します。

そんな伊藤さんに仕事における失敗談について尋ねると、率直な答えが返ってきました。

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開業した当初、顧客数をある程度確保しないといけないと思い、価格重視の低単価を希望するお客様も引き受けていました。全部が全部ではありませんが、価格重視のお客様ほど対応に時間がかかる傾向があり、引き受ける基準を事前に明確にしておくべきだと反省。一度下げた価格を上げることは難しい面があるため、料金は事前にはっきりとさせておくべきだと思いました。

3日に一度の靴磨きを"つづける"理由

伊藤さんは3日に一度は革靴を磨くそうです。何よりも顧問先に話しやすい印象を持ってもらうため、身だしなみに気を配っているのです。

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私たちの仕事は、お客様に話していただかなければ一歩も前へ進んでいきません。例えば私が身だしなみを気にするのも、「損金」や「益金」といった専門用語は使わずに、かみ砕いて説明するのも、お客様が話しやすい雰囲気を醸成するためです。

パソコンや文房具といった仕事道具にも、こだわっています。特別に高価なものを使っているわけではありませんが、清潔感のあるものを選んでいます。それもこれも、お客様に与える印象を大事にしたいからです。

例えば野球のイチローさんは小学生の頃に最高級のグラブを買ってもらい、大切に手入れをして使っていたというエピソードは有名です。あるいは将棋の大山康晴名人は上達の秘訣を聞かれた際、「良い将棋盤と駒を買いなさい」と言ったそうです。一流になりたければ道具にこだわりを持て――。伊藤さんも、この教えを地で行っているのかもしれません。

最近は靴磨きの頻度が下がっているそうで、「ちょっと反省ですね」と語る伊藤さんですが、"つづける"ことに関しては強いこだわりがあるだけに、今後もピカピカの革靴を履いて顧問先を訪れることでしょう。

*     *     *

取材の最後に将来の夢を尋ねると「今はプレイングマネージャーとして活動していますが、将来的には事務所の規模を拡大し、経営に比重を置ける環境を作りたいです」と話す伊藤さん。学生の頃に描いた「経営者になりたい」という夢は今も"つづいて"いるようです。

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