AI時代を生き残るヒント!46万部の「メモの魔力」まとめレビュー
顧問先の話をヒアリングしたり、事務所内で打ち合わせをしたりと、会計事務所のみなさんならメモを取る機会も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、46万部を突破し、2019年の年間ベストセラーランキング、ビジネス書部門第1位(トーハン調べ)に輝いた「メモの魔力」をLanchor(ランカー)編集部でレビューしてみたのでお届けします。
著者の前田裕二氏は、本書の中でAI時代に価値を発揮できる人材の素養についても触れています。「メモの魔力」には、「いい税理士」に近づくための重要なヒントが詰まっているのかもしれません。
「メモの魔力」はただのメモ本やノート術にあらず
著者である前田裕二氏は、現在若者を中心に人気を集めるライブ配信サービス「SHOWROOM」の代表を務める人物です。幼少の頃より、勉強するときだけでなく生活の中で気づいたことをメモに取り続けてきました。そして、就職活動をする頃には、自己分析を書き記したノートは30冊にもなり、見事に外資系投資銀行の内定を勝ち取ります。「SHOWROOM」の立ち上げを果たした今もなお、メモの力で目標の達成や成功へ向かって歩み続けています。
本書では、前田氏が実践する独自のノートの取り方を提案しながら、AIが普及する時代に生き残る人材になるために創造性を高めていかなければいけないというメッセージが熱く語られています。「事実の記録」のためではなく、「知的生産」のためにメモを取ることでAIに負けない人材になれることを伝えてくれています。
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では、どうすれば付加価値の高い活動を行えるようになるのか。その問いに対する答えの1つが、本書で紹介する前田流のメモの取り方なのです。
とりわけ、税理士や会計事務所の仕事は「AIに奪われる仕事」の代名詞かのごとく取り上げられます。高い付加価値を中小企業に提供することが求められる会計事務所のみなさんにとって、ヒントとなる情報が詰まっているのではないでしょうか。
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メモ術で得られるのは「いい税理士」にも欠かせない5つのスキル
まずは、本書に書かれたメモの取り方を実践することで、身につく5つのスキルについてご紹介します。この5つは、中小企業の業績アップに貢献する「いい税理士」にとっても、欠かすことのできないスキルではないでしょうか。
①アイデアを生み出せるようになる
メモを取る。つまり、情報を「言語化」する過程で思考力が発揮され、アイデアを生み出せるようになります。中小企業の経営者にヒアリングした内容を言語化することで、経営者に気づきを与えられるアイデアが生み出せるようになるかもしれません。
②情報のインプット力が高まる
メモの習慣を身につけると、有益な情報をキャッチするための感度が高まります。普段なら無意識に素通りしてしまうような情報もインプットすることができます。中小企業に役に立つ情報へのアンテナも高まり、経営者との話題を増やせるのではないでしょうか。
③ヒアリング力が高まる
メモを取りながら自分の話を聞いてくれると、話をしている側は「真剣に聞いてくれている」という印象を抱きます。その結果、心を許して「深い話」をしたくなります。中小企業の経営者も、自分の話を真剣に聞いてくれる相手には熱を込めて話をします。これまで聞けなかったような想いやエピソードを引き出せるようになります。
④複雑な物事を整理できるようになる
メモを取ることで、会話の流れを構造化して整理できるようになります。会話全体を俯瞰することができ、今は何の話題をどんな目的でどの程度話しているのか整理することができます。経営者の中には、熱が入りすぎて、脈絡なく色々な話をされる方もいます。メモを活用することで、経営者の話や頭の中を整理してあげることができるかもしれません。
⑤説明する力が高まる
メモを取るという行為においては、曖昧な感覚や概念すらも言語化しなければなりません。後から見てもわかるような言葉で書くことを心がけることで、必然的に説明する力を磨くことができます。これまでは経営者に理解してもらえなかったことも、わかりやすく説明することができるようになるのではないでしょうか。
「ファクト→抽象化→転用」のプロセスで、アウトプットを増やす
では、これらの5つのスキルが身に付く前田流メモ術とは、どのような手法なのでしょうか。ここからは、前田氏が実践しているメモの取り方の手順をご紹介していきます。
まず、ノートの見開き1ページを大きく4つのゾーン(標語・ファクト・抽象化・転用)に分けます。人間には空白を埋めようとする習性があるそうです。ノートを広々と使って、思考を活性化させることが重要です。
①「標語」でテーマを明確にする
「標語」のゾーンには、何についてのメモなのか。「テーマ」を一言で表現します。 例えば「顧問先A社の月次訪問」とサマリーに書いたとしたら、標語は月次訪問における話題をテーマとして書いていくイメージです。
- 今月の売上報告について
- 店舗運営の問題点について
- 従業員同士の人間関係について
など、話題毎にシンプルに標語を考えて名前をつけていきます。
②「ファクト」に事実をメモする
「ファクト」には、一般的なメモで行うような「事実の記録」をしていきます。例えば「店舗運営の問題点について」のテーマに対しては、経営者から聞き出した事実や、自分で店舗を見て気づいたことや感じたことを書き出していきます。
この「ファクト」までのノート左半分は、「知的生産」につなげるための準備段階です。次の「抽象化」からが、前田流メモの真骨頂。左半分で書いたメモの内容を、右半分のプロセスで思考を働かせてアイデアに結び付けていきます。
③事実を「抽象化」していく
「抽象化」とは何をすればよいのか、難しく感じる方も多いようです。一言でいえば「アイデアを生み出すために、事実を噛み砕いて自分の中に落とし込んで整理すること」だと理解することができます。そして、この「抽象化」には3つの手法があります。
1:What型
「一言でいうと?」という問いを使い、名称をつけたり物事をまとめる手法。
2:How型
「つまりどういうこと?」という問いを使い、要点や特徴を抜き出していく手法。
3:Why型
「なぜなのか?」を問いを使い、本質や理由を深堀りする手法。
どの手法を使うべきかは「ファクト」によって異なります。そのため、コツをつかむまでは難しく感じる方もいるかもしれません。次の「転用」を説明した後に、Lanchor(ランカー)編集部で実践してみた事例をご紹介します。
④「転用」でアイデアを生み出す
「転用」とは、「抽象化したことを別のことで活かせないか」と考えることです。言葉にすると簡単ですが、具体的にイメージするが難しいかもしれません。Lanchor(ランカー)編集部で実際に「ファクト→抽象化→転用」の思考プロセスを試してみた内容をご紹介します。
ファクト:
建設業の顧問先に、顧問料が高いからという理由で契約を打ち切られてしまった。
抽象化<What型>
提供しているサービスの価値が伝わっていない。または、相手にとってサービスが過剰すぎる。
抽象化<How型>
顧問料ほどの価値を提供できていない可能性がある。
抽象化<Why型>
建設業は受注に波があるため、入出金が読めなくて資金繰り予測が難しい。事務所の強みである資金繰り対策で価値提供ができていないのかもしれない。
転用①:
受託型ビジネスの顧問先も資金繰り予測がしにくく、同じように解約リスクが高いかもしれない。
転用②:
予測が難しいのであれば、急に資金難になったときのシミュレーションをして、事前予防策を提案するサービスを提供すれば価値を感じてもらえるかもしれない。
このような思考プロセスを繰り返しをおこなうことで、アイデアの総量を増やし、創造性ある思考を習慣化させ、AIに代替される価値を生み出せるようになるということではないでしょうか。
ちなみにポイントは、「とにかく量を取ること」とのことなので、慣れるまではガリガリと手を動かしていくのが良さそうです。
メモ術活用してAIに負けない「いい税理士」になる
AIに負けない付加価値をいかに発揮することができるか。これは「Lanchor(ランカー)」でお伝えしている「いい税理士」にも求められることです。本書のメモ術を活用することで、中小企業の業績アップにつながるアイデアも生み出せるようになるかもしれません。
さらに、本書では次のような前田氏の言葉が綴られています。
AI時代においては、機械に代替できないような人間らしい生き方をしている人、そして、人の中にある「感情」そのものに価値が集まるようになります。
ー中略ー
つまり、「自分は何者か」「今、何がやりたいのか」と「これから何をやっていくのか」といった問に明確に答えられる人間であるかどうかが、今後ますます大事になっていきます。
「いい税理士」は中小企業の経営者のミッション・ビジョンをしっかりと把握することはもちろん、事務所のミッション・ビジョンを掲げることが大切です。それはまさに、前田氏がいう「自分は何がやりたいのか」といった問いかけにしっかりと答えていくことに他なりません。
ミッション・ビジョンを明確にするためは、自分の琴線に触れるような経験を蓄積した上で、本質的な想いや考えを言語化するプロセスが必要になります。本書にはそのプロセスを実行するヒントが書かれているのではないでしょうか。
【紹介書籍】
メモの魔力 -The Magic of Memos-
前田裕二 / 著 1,400円(税別)
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