説明上手な税理士になるためのたった1つのコツ ロジック図解のススメ

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「税理士の話がわかりにくい」と言われる大きな要因の一つは、会計の専門用語を経営者が理解できないことにあります。例えば「利益が0円だったのに、どうして法人税を納める必要があるのか?」と経営者に聞かれた場合、会計用語である「費用」と「損金」の違いをどう説明すればよいでしょうか?

こういう時に効果を発揮するのが「図解」です。この記事では図解や論理的思考の専門家である開米瑞浩さんへのインタビューを通して、会計上の専門的な概念を経営者に正確かつわかりやすく伝えるコツを紹介します。

説明が下手な税理士と上手な税理士の違い

まずは具体例からご覧いただきましょう。会計の知識に乏しい経営者が、税理士に対して質問をする場面です。

社長:先生、うちには利益がなかったのに、どうして法人税を納める必要があるんですか?
税理士:会計上の利益は、収益から費用を引くことで求めます。ですが法人税の計算の場合、利益を課税所得に、収益を益金に、費用を損金に置き換えて求めます。つまりこういうことです。

  • 会計上の計算:利益=収益-費用
  • 法人税の計算:課税所得=益金-損金

社長:はあ。
税理士:費用も損金も「会社の支出」「利益のマイナス項目」という意味では同じですが、会計と税法では視点が違うんです。会計上の費用は、企業会計原則や簿記のルールに則っていればすべて認められます。ですが税法上の損金は、内容によっては認められないことがあります。
社長:……。
税理士:貴社が法人税を払わなければいけないのは、税金を計算する時に一部の支出が損金として認められず、会計上の利益が再計算されたからです。
社長:????

このやり取りを見た開米瑞浩さん(アイデアクラフト代表)は、次のように指摘します。

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最初の質問で、この経営者は「収益」の意味を理解していない可能性があることがわかります。その人に対して課税所得や益金、損金といった税法の専門用語を羅列しても正しく伝えることはできません。

この例のように収益と益金、費用と損金という似ているようで違う用語を使う場合、それらがどのような関係にあるのかをイメージできる形で説明しなければなりません。その際、言葉だけでは難しいので「図解」する必要があるのです。

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相手が知らない用語を一度にいくつも出してはダメ。特に「似ているけれど違う概念」は知識のない人には区別しづらいので、違いを区別する手がかりを注意深く明示しながら説明しなくてはなりません。またこの税理士さんは「会計と税法では視点が違います」と話していますが、「視点が違う」の意味合いを説明していないのも問題点の一つです。

例えば次の例のように、類似の構造があるものについてはその構造を明示すべきだと開米さんは指摘します。

ロジック図解_類似の構造
出典 アイデアクラフト

先ほどの税理士の説明では、次のようにまとめています。

  • 会計上の計算:利益=収益-費用
  • 法人税の計算:課税所得=益金-損金

しかしエネルギーや動力といった「共通部分」がないので類似性がわからない、と開米さん。

税理士の説明の例では、会計上の計算と法人税の計算に共通する「構造」を示す必要があるのです。共通する構造とは、

「入ってきたお金」「出ていったお金」に一定のロジックで加算・減算をして「収益(益金)」「費用(損金)」を計算する

というものです。それを明示する形で説明すると、次のようになります。

ロジック図解_単純な考えの利益
出典 アイデアクラフト

図中にも記載があるように、単純に考えれば会社に「入ってきたお金」から「出て行ったお金」を差し引いて残った分が利益となりそうです。実際、この経営者はそう認識しているようです。しかしご承知のように、話はそう簡単ではありません。

ロジック図解_さまざまなロジックで加算・減算
出典 アイデアクラフト

税理士にとっては常識でも、経営者にとって当たり前とは限りません。事実、例に挙げた経営者はこの加算・減算のルールを理解していません。

さらに、税理士が何の前触れもなく使った「益金」や「損金」、「課税所得」についても説明が必要です。

ロジック図解_益金・損金・課税所得
出典 アイデアクラフト

ここまで説明すると、経営者はようやく腹落ちしてくれます。

このように図解を用いて説明すると、見えなかった「構造」がはっきりするため、情報を正確かつわかりやすく相手に伝えられるようになります。

説明上手になるコツはラベル付けの習慣を身につけること

では、図解を用いて説明上手な税理士になるためには何から始めればよいのでしょうか?そのための第一歩として、「ラベル付け」の習慣を身につけることを開米さんはお勧めします。

ラベル付けとは次のようなものです。

まず、ラベル付けされていない情報の例として、ある会社で実際に使われた報告書(一部抜粋)を示します。

ロジック図解_Sプロジェクト原文
出典 アイデアクラフト

この情報に対して「カテゴリーラベル」と「サマリーラベル」という2種類のラベル(見出し)を付けていくのです。この文章の情報は「タスク概要」「問題点」「悪影響」「対応策」の四つにカテゴリー分け(分類)できます。その「分類」を示すのがカテゴリーラベルで、以下のようになります。

ロジック図解_カテゴリー
出典 アイデアクラフト

続いて、それぞれのカテゴリーに本文の情報を一言に要約したサマリーを加えていきます。

ロジック図解_サマリー
出典 アイデアクラフト

「カテゴリーラベル」は分類を示すだけで具体的な情報が何もないのに対して、「サマリーラベル」には本文の中で最も重要な情報が凝縮されています。このため本文を読む時間のない人にはサマリーだけ読んでもらえば伝えたいことを理解してもらえます。

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ここで例示した「Sプロジェクト業務検証報告」もそうですが、5箇条以上の箇条書きにはたいていの場合、何らかの構造があります。それを整理・分類して構造を示す習慣を身につけることで説明力は鍛えられます。

日頃から情報を整理・分類していくことが、説明上手な税理士になるためのコツなのです。そして「論理的思考が苦手な人でも、訓練さえすれば一定のレベルに達することは可能です」と開米さんは付け加えます。

説明上手な税理士は経営者から信頼を勝ち取れる

カテゴリーとサマリーの例を見て、難しいと感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかし「最初から完璧な図を作る必要はありません」と開米さん。むしろ穴だらけの図を示すほうが好都合なこともあるのだとか。

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穴のある図を示すと、「この先生はここがわかっていないんだな」ということを経営者は把握でき、こちら(税理士)が理解できるよう積極的に話をしてくれることが多いものです。図解というのは、相手に話を切り出してもらうきっかけにもなるのです。

その会社の業務内容やビジネスモデルについて最も詳しいのは経営者です。経営者から話を聞き出さなくては経営支援は行えません。その意味でも、図解を用いて説明上手な、そして聞き出し上手な税理士を目指す価値はあります。

さらに「上手に説明できる人は相手から信頼される確率が高くなる」と開米さんは言います。

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信頼を勝ち取るために必要な要素は三つあります。一つ目は、理屈がわかりやすいこと。税理士が会計や税務、財務などの話をする時に「こういう理屈でこうなるんです」とわかりやすく説明できると、「この人の言うことなら聞いてよさそうだ」と経営者は考えてくれます。二つ目は、仲間意識が芽生えやすいこと。説明が上手だと「この先生はうちの会社のことをよくわかってくれる」という感覚を経営者に持ってもらいやすくなります。三つ目は、図解や論理的思考とは離れますが、誠実さが経営者に伝わること。世の中には頭の良い優秀な人はたくさんいますが、いくら頭が良くても、噓をついたり言い訳をしてごまかしたりする人は信用されません。説明が上手な税理士は、誠実さが経営者に伝わりやすいのです。

*  *  *

図解の効果についてご理解いただけたでしょうか?

中小企業の経営者は、頼りになる経営参謀の存在を求めており、会社の財務状況を把握している税理士はその存在になり得る立場にいます。

「先生の話はわかりにくい」と言われたことのある方、あるいは自分の説明力に自信を持てない方は、まずは日々のラベル付けから始めてみてはいかがでしょうか。

参考文献 アイデアクラフト

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