資料を変えれば伝え方に自信がつく 税理士のための伝わるプレゼン術

公認会計士 眞山徳人さん

顧問先の社長に情報提供したり、時には社長を説得したり、プレゼンテーションのスキルはさまざまな場面で役立つものです。この記事では『会計士・税理士のための伝わるプレゼン術』の著者で、会計士でもある眞山徳人さんに、プレゼンスキルを高める方法について聞きました。

お話をうかがった方:眞山徳人さん
公認会計士。監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)を経て、2016年に独立。2016年に行われたスピーチコンテストにて日本一に輝いて以来、プレゼンテーションの専門家としての活動も行っており、指導実績は延べ3万人を超える。 2022年2月2日、YouTubeチャンネル「眞山徳人のプレゼン相談室」開設。
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税理士が抱える三重苦とは

税理士はプレゼンに関して三重苦を抱えていると眞山さんは指摘します。三重苦とは、次のことを指します。

①話す内容がどうしても難しくなる

税理士はインボイスや電子帳簿保存法、毎年の税制改正など、複雑な概念をわかりやすく説明しなければなりません。

②聞き手のレベルがバラバラ

多くの場合、聞き手のレベルがバラバラで、どこに焦点を絞って話せばよいかわからないという問題があります。例えばセミナーの参加者を募る際、「経理の経験が3年以上の人」と対象を絞っても、財務も含めた広範囲の経理の仕事をしているのか、それとも請求書を送るだけなのか、といったようにどうしても聞き手のレベルにばらつきが生じます。

③税理士にはシャイな人が多い

税理士や会計士のパーソナリティの特徴として、人前で話すことに抵抗感がある、言い換えればシャイな人が多いという問題があります。

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税務のプレゼンでは資料作りが8割

こうした三つの苦しみを抱える税理士がプレゼンスキルを高めるには、資料作りに時間をかけることが大切だと眞山さんは話します。

資料を変えれば伝え方に自信がつく 税理士のための伝わるプレゼン術眞 山
一般のビジネスパーソンを対象としたセミナーでは、事前準備と本番にかける熱量はフィフティ・フィフティがよいとお伝えします。ただ、会計や税務のプレゼンに限っては、事前準備に8割の熱量を注ぐべきだと申し上げています。

理由はいくつかあります。例えば税理士が作ったプレゼン資料は相手が読み返すことが多いので、あとで辞書の代わりに使えるようなものにする必要があります。あるいはプレゼンの事前準備をしっかりしておくことで、自信を持って本番に臨めるようになることも理由の一つです。

資料作りの第一歩はアウトラインを考えること

資料作りに熱量をかけるべきであることはわかりました。では具体的に何をすればよいのでしょうか?この点について、まずはアウトライン(話す順序)を考えることが大切だと眞山さんは指摘します。例えば下図をご覧ください。

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出典 『会計士・税理士のための伝わるプレゼン術

パターン1のほうは、自社のストロングポイントを述べたうえでクライアントの課題に切り替える順序になっています。一方、パターン2はクライアントの属する業界の話題から会話に入っていきます。同じ内容なのに印象がずいぶん違うことがわかります。

資料を変えれば伝え方に自信がつく 税理士のための伝わるプレゼン術眞 山
パターン2は相手の悩みに寄り添ってから自社の強みを伝える順序になっている点で、聞き手に信頼感を与えられるアウトラインだと言えます。このように、話す順序を変えるだけで、聞き手の印象は大きく変わります。

言い換えると、話す順序を変えることで聞き手の印象をコントロールできるのです。細かな表やグラフの作り込みに入る前に、アウトラインをしっかり決めることが大切なのはそのためです。

またアウトラインとして決めた順番どおりにプレゼン資料を作るのは、実は作業効率を高めることにもつながります。無駄な資料を作って、結局プレゼンで役に立たないとか、逆に話さなくてはならないところに十分な資料が揃っていないということがなくなるからです。

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忙しい経営者のために結論を先に示す

税理士が話す相手は経営者や経理部門の責任者など、たいていは多忙な人たちです。面談の時間を確保していても、急な用事で席を立たなければいけないこともあり得ます。ましてや今はスマートフォンやアップルウォッチなどで大事なメッセージの通知が来て、そちらに気を取られてしまうことも考えられます。

資料を変えれば伝え方に自信がつく 税理士のための伝わるプレゼン術眞 山
プレゼンが尻切れトンボになってしまうのは良くないので、まずはしっかりと結論を伝え、その結論に至ったプロセスや、結論を支えるエビデンス(根拠)をその後で話すようにすることが大事です。

相手のレベルや性格にあわせた内容にする

また聞き手を想定するために下記の分類軸を用い、プレゼンで使う言葉を決めていくことも効果的だと眞山さんは指摘します。

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出典 『会計士・税理士のための伝わるプレゼン術

資料を変えれば伝え方に自信がつく 税理士のための伝わるプレゼン術眞 山
顧問先の社長や経理部長など、話す相手があらかじめ決まっている場合は、この軸に沿ってどんな言葉を使えば伝わるか検討しておくと上手く行きやすくなります。

わかりやすいに越したことはありませんが、プライドが高い人に対してやさしい言葉を過剰に使うのは危険です。「そんなことくらい知っている、失礼な奴だ」と怒らせてしまったらプレゼンどころではありません。書籍の中から一つ例を挙げます。

<社長のパーソナリティ>

  • 年齢層:50代
  • 知識量:初心者と経験者の間くらい
  • プライド:高い
  • 理論派・感覚派:感覚派
  • 楽観的・保守的:楽観的

この社長に対して次の内容を伝えることにします。

予定通りに利益を計上できない場合、繰延税金資産の回収可能性に疑義が生じる可能性があります。

出典 『会計士・税理士のための伝わるプレゼン術

社長の知識量は初心者と経験者の間くらいなので、「回収可能性」や「疑義が生じる」といった専門的な用語は避けたほうがよいでしょう。また文章では簡単に説明しにくい「繰延税金資産」には鍵カッコをつけ、それが専門用語だと一目でわかるようにします。まとめると次のような形になります。

思うような業績を上げられない場合、『繰延税金資産』を減額しなければならなくなるかもしれません。

出典 『会計士・税理士のための伝わるプレゼン術

社長が理論派ではなく感覚派だということも考慮して、「予定通りに」や「可能性」といった、やや理屈っぽい言葉も避けています。そして鍵カッコで括った「繰延税金資産」については別途、口頭などで捕捉するようにします。

ここまで配慮したプレゼン資料であれば、きっとうまく伝わるはずです。要は、聞き手の知識レベルや性格にあわせて資料を作るという基本姿勢を忘れないことが大切なのです。

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プレゼン本番を成功させるためのテクニック

ここまでは事前準備である資料作りについて説明してきましたが、プレゼン本番に役立つテクニックも一つだけ紹介したいと思います。眞山さんが「早口を直す3ステップ」と呼ぶものです。

ステップ① 慣れるまでは「10秒だけ」ゆっくり話す
ステップ② 慣れてきたら「気づいたときに」ゆっくり話す
ステップ③ さらに慣れてきたら、自在にスピードを変える

出典 『会計士・税理士のための伝わるプレゼン術

プレゼンに早口は禁物です。ステップ①を意識するだけでも効果は絶大だと言います。なぜならゆっくり話し始めると、徐々にスピードが上がっても聞き手の耳がついてこられることが多いからだと眞山さんは話します。

*     *     *

このようにプレゼンの上手い税理士になるには、場数を踏むことと正しいプレゼン方法を身につけることに尽きます。

トーストマスターズをご存じでしょうか?プレゼンの勉強会や発表会を開催するNPO法人です。眞山さんもトーストマスターズなどを利用してプレゼン技術を磨いてきたそうです。ぜひそちらも参考にしてください。

参考文献 『会計士・税理士のための伝わるプレゼン術

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