競争の時代を生き抜くための「ビジョン・ドリブン・リーダーシップ」

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競争が激化している税理士業界。その中を生き抜いていくには、税理士事務所の全メンバーが一丸となって進んでいくことが不可欠であり、代表税理士のリーダーシップなくしては、事務所の一体感を醸成することは困難です。この記事では「ビジョン・ドリブン・リーダーシップ」を提唱する三輪一郎さんに、代表税理士が持つべきリーダーシップについて伺います。

ビジョンが満たすべき三つの条件

ビジョン・ドリブン・リーダーシップとは文字どおり、ビジョンを掲げ、事務所スタッフが一丸となってそれに向かっていく手法を指します。ビジョンという言葉に馴染みのある方も多いと思いますが、三輪一郎さん(元内閣府CIO補佐官、株式会社プライド執行役員/シニア・システム・コンサルタント)は良いビジョンの条件として次の三つを挙げます。

①メリットが読み取れること

代表税理士には事務所スタッフの精神面にプラスの影響を与えることが求められます。例えば「やる気を出す」とか「その気になる」などです。ではどういう時にスタッフはやる気を出したりその気になったりするのでしょうか?間違いなく言えるのは、自分にメリットがある時です。その意味でも、ビジョンを策定する際には「みんながやる気になるにはどんなビジョンが必要か」という観点で考えてみることが大切です。

②到達できるものであること

メリットは結果として得られるものです。メリットだけを語っても、そこに至るまでの方法がなければ絵に描いた餅に過ぎません。スタッフをやる気にさせるにはメリットを見せるだけでなく、努力すればそれが実現できる目標であることを納得させる必要があります。

③提案力を発揮できるものであること

①②ともビジョンを策定するうえで不可欠な要素ですが、今回はこの③について詳しく説明してみたいと思います。

まず税理士は、御用聞き型と提案型に大別できます。リーダーである代表税理士が御用聞き型でよいはずはないのですが、実際には「頼まれたことをしっかりやる」タイプの税理士は少なくありません。これについて三輪さんは次のように指摘します。

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顧客から頼まれていないことまでするのが提案型の税理士です。頼まれていないことをすると、喜ばれる確率は下がります。うまく行くのは良くて3割くらいでしょう。提案のうちの7、8割は顧問先にとって期待外れになります。しかし効率が悪いと思ってはいけません。大谷翔平選手でも打率は2割6分程度。提案型でクリーンヒットを生むためには4回の空振りが必要なのです。そして空振りもしながら提案のプロセスを経ることにより、自身の提案力は磨かれていきます。ビジョンには提案力を高める要素も盛り込むと効果的です。

顧問料の単価を上げるうえで大切な点

事務所の規模を拡大したいと考えていない人でも、顧問先の単価は上げたいと思っているはずです。そのためには付加価値の高い提案をすることが重要になります。

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例えばA社に対する提案で空振りを繰り返しても、その経験は他の顧問先であるB社やC社に対する提案に活かせます。そして意外なことに、A社から新規の会社を紹介してもらえる機会も増えてきます。何もやらない人よりも、積極的に提案する人のほうが圧倒的に評価されるのです。

ただし提案の精度は高くなっても、打率が5割や6割に上がることはないと思ったほうがよいでしょう。というのも、提案を続けていると自分自身のステージが上がり、すなわち業務の範囲が広がったりして、より難易度の高い打席に立つ機会が増えるからです。難易度が上がるのですから当然、顧問料の値上げが期待できます。

例えば若手の税理士を採用した隣の税理士事務所では、ぎりぎり収益の上がる安価な顧問料を提示してくることもあるでしょう。そんな時、きちんと腕を磨いてサービスレベルを高めておかないと、あっと言う間に価格競争に巻き込まれてしまいます。提案力を高めるのはそれを避けるためでもあるのです。

OODAループとビジョンのアップデート

次にリーダーシップを発揮するための方法論について説明します。「PDCAサイクル」をご存じの方は多いと思います。

  • Plan(計画)
  • Do(実行)
  • Check(評価)
  • Action(改善)

計画を立てて実行に移し、評価したうえで改善するという一連のプロセスを指します。近年、これに代わる概念として「OODAループ」というものが注目されています。

  • Observe(観察)
  • Orient(状況判断)
  • Decide(意思決定)
  • Action(行動)

OODAループはこれらの頭文字を取ったもので、問題を解決するための意思決定プロセスの一つです。もともとは軍事目的で使われていたもので、1991年の湾岸戦争をきっかけとして民間にも広く認知されるようになりました(提唱は朝鮮戦争時代、空軍のジョン・ボイド大佐)。

ワシントンからの指示で、攻撃目標に対する空爆を試みたものの、空振りが続いた米軍。状況を打開するためOODAループに基づき戦況を分析し、攻撃目標を新たに設定して行動に移したのです。

最初に立てた計画を重んじるPDCAサイクルに対して、観察から始め、計画を練り直すことも含めて柔軟に対応するのがOODAループの特徴です。

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昔はゴールポストを動かすのは悪いことだと思われていましたが、その認識を改め、ビジョン自体を適切なものに調整しながら進めていくOODAループのやり方が主流になりつつあります。特にコロナ禍で不確定要素の多い昨今、有効な計画が立てにくくなっています。そのような状況では、ビジョンそのものを柔軟に再構築していくOODAループのプロセスが有効です。

例えば策定から3年や5年が経過したビジョンが形骸化してしまわないように、大きな環境の変化を認識した時点でビジョンが現状に即したものになっているか話し合い、必要に応じて描き直すのです。競争の時代を生き抜くために求められているのは、OODAループを使い、柔軟な姿勢でメンバーを引っ張っていくリーダーだと言ってよいでしょう。

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優れたリーダーになるための5つの条件

大きなシステムが複数のサブシステムに分割できるように、ビジョンにも階層があります。ヒエラルキーの頂点に来る大きなビジョンは頻繁に変えるべきものではありません。その大きなビジョンの実現手段となる具体化されたビジョンは、柔軟に変えていくべきだと三輪さんは指摘します。

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具体化されたビジョンを策定し直す際、OODAループの文脈に即して考えると、観察(Observe)し、状況判断(Orient状況判断)し、意思決定(Decide)するところまでがリーダーの役目になります

加えてリーダーに求められる条件として、三輪さんは次の5点を挙げます。

  • ビジョンを明確にし、何を成し遂げたいかを周囲に説明する
  • 広い視野を持ち、時には周辺の諸事情まで理解したうえで対応する
  • 顧問先に対しても自分の意見をしっかりと伝える
  • 事務所スタッフを信頼して仕事を分担し、実力に応じて調整と指導の手間を惜しまない
  • ビジョンの描き直しも含めて物事に柔軟に対応する
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例えば自動車メーカーの本田技研工業(ホンダ)の創業者である本田宗一郎さんは、言わずと知れた一流の技術者であり、誰もが認める理想的なリーダーです。ホンダがまだ小さなオートバイメーカーだった頃、本田さんが「マン島TTレース(英国のマン島で開催されるモーターサイクル競技)に出場する」というとてつもないビジョンを掲げたのは有名な話です。

その構想から5年後の1959年に初出場を果たし、1961年には1位から5位までを独占するに至ったのは、本田さんの掲げたビジョンがあったからこそだと思います。大きなビジョンに向かい、その実現手段を試行錯誤した好例だと言えます

*  *  *

以上、ビジョン・ドリブン・リーダーシップについて説明しました。ここで取り上げたことだけがリーダーの条件ではありませんが、真のリーダーを目指す税理士が、個々のスタッフのスキルを束ねて活かすための手段として、リーダーシップについて考えるきっかけになれば幸いです。

参考文献
『ITアーキテクト』(Vol.12)
『はじめての上流工程をやり抜くための本』
株式会社プライド

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