【税理士業界の業務改善に関する実態調査】8割以上が「改善が必要」と危機感 課題は「ITスキル」
事務所の規模が拡大していく過程で、一人のスタッフが受け持つ顧問先の数が増えると、業務を改善および効率化しなくては事務所が回らなくなってしまいます。クラウド会計やビジネスチャットツールといったITサービスの導入をはじめ、各種の業務改善は多くの会計事務所にとって不可避と言っていい状況にあります。
Mikatus(ミカタス)株式会社が2021年10月に実施した全国126事務所を対象とするアンケート調査の結果、8割以上が「業務改善の必要性を感じている」と回答した一方で、スタッフのITスキルに課題を抱える事務所が数多く存在することが明らかになりました。この記事では調査結果の一部を示しながら、会計事務所の業務改善の現状と課題についてお伝えします。
事務所内の業務改善、8割以上が必要を感じていると回答
事務所内の業務改善について、どの程度必要性を感じていますか?という質問に対する回答は「感じている(54.0%)」、「やや感じている(32.5%)」という結果であり、8割以上がその必要性を感じていることが明らかになりました。
しかしながら、業務改善の取り組み状況について「業務改善が進んでいる」との回答は半数以下に留まり、過半数の事務所では業務改善の取り組み状況が思わしくないことがわかりました。
最も効果があったのは「付加価値サービスの提供」
業務改善に関して取り組んでいることとしては、電子帳簿保存法改正やインボイス制度への対応などに関連する「デジタル化・ペーパーレス化」が7割と最多で、「①生産性の向上」、財務顧問、経営顧問、M&A支援などの「②付加価値サービスの提供」、証憑の自動取込や自動仕訳などの「③DX推進」の3つがそれぞれ半数を超える結果となりました。
業務改善の取り組みのうち最も効果があったものとしては「付加価値サービスの提供」、「ペーパーレス化」、「自動仕訳」などの回答がありました。
AI-OCRやRPAを活用した「DX推進」やモバイルPCの活用による「テレワーク促進」についても、効果があった取り組みとして複数の回答がありました。なお業務改善に期待する成果として多かった回答は「生産性の向上」と「顧客満足度の向上」の2つでした。
業務改善のカギは「ITスキル」
業務改善の成果に影響するもの、および業務改善を進めるうえでの課題については、パソコンやインターネットなどに関する「ITスキル」という回答が最も多く、事務所内の業務改善のカギが「ITスキル」にあることが浮き彫りになりました。特に業務改善を進めるうえでの課題については、3人に1人以上が「ITスキルが障害になっている」と回答しました。
その他、業務改善の成果に影響するものとしては「顧客への貢献的な姿勢」や「社内の風通しの良さ」や「経営理念、経営方針」といった社風や文化に関する回答も多く、課題についても「変化に対する抵抗感が強い」や「将来への危機感が希薄である」といった社風や文化に関する回答が一定数ありました。
デジタルツール導入済みの第1位は「クラウド会計」
事務所内に導入しているデジタルツールとしては「クラウド会計」と「データ管理ツール(共有ドライブ)」を筆頭に、「オンライン会議ツール(Zoom、Teamsなど)」、「予定管理ツール(グループウェア)」、「労務管理ツール(勤怠管理・WEB給与明細)」といった回答がありました。少数ながら「法務ツール(オンライン契約)」や「経理ツール(経費精算)」という回答もありました。
導入効果が高かったと感じられるデジタルツールについては「クラウド会計」と「データ管理ツール(共有ドライブ)」との回答が過半、「予定管理ツール(グループウェア)」 、「オンライン会議ツール(Zoom、Teamsなど)」が3割を超えました。
導入を検討しているデジタルツール第1位は「業務自動化ツール」
事務所に導入を検討しているデジタルツールについては、3人に1人が「業務自動化ツール(OCR、RPAなど)」と回答しました。次いで「予定管理ツール(グループウェア)」、「クラウド会計ツール」、「データ管理ツール(共有ドライブ)」との回答が2割を超えました。
またデジタルツール導入により期待する成果については、約9割が「生産性の向上」、約5割が「顧客満足度の向上」と回答。「新規顧客の獲得」、「人材育成の促進」、「災害対策、BCP(事業継続計画)対応」、「他の事務所との差別化」もそれぞれ2割程度の回答でした。
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以上、Mikatusが実施した「税理士業界の業務改善に関する実態調査」の結果の一部を示しながら、業務改善の実態についてご紹介しました。多くの会計事務所が業務改善の必要性を感じているものの、ITスキルの不足などが障害となり改善を進められていない状況にあることがわかります。
本レポートが、業務改善に取り組む税理士の皆さまのお役に立てば幸いです。
調査方法
実施期間:2021年10月11日~10月31日
調査対象者:全国の会計事務所の皆さま 回答数 総計126件(うち税理士106名)
調査方法:インターネット調査
調査機関:Mikatus株式会社
※ Mikatus株式会社は2022年9月30日をもちまして、当社の完全親会社であるfreee株式会社と合併いたしました。
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