【セミナーレポート】応募者が10倍に!税理士事務所の採用を成功させる求人票とは?

人材の確保が喫緊の課題となっている税理士業界。「いい人」が採用できないという悩みを抱える代表税理士さんは少なくないのではないでしょうか?採用を成功させるためには、「いい人」を探すのではなく、事務所に「合う人」を選ぶように発想を切り替える必要があります。そして求人票に適切な内容を記載することで「合う人」が集まりやすい状況は作れます。ここでは、いい税理士協会と株式会社レックスアドバイザーズが11月25日に共同で開催した、「税理士事務所の採用を成功させるための求人票とは?」と題したオンラインセミナーの模様をレポートします。
採用すべきは「いい人」ではなく「合う人」
今回のセミナーは3部構成で行われました。第1部に登壇したのは、いい税理士協会の田中啓介さん(代表理事)。まずは、「いい人」ではなく事務所に「合う人」を採用することを勧めた田中さんのセッションから振り返ります。
セッションの冒頭で田中さんは、事務所に「合う人」の条件として次の三つを挙げました。
- 事務所の理念や方針に共感してくれる人
- 事務所が大事にしている価値観に理解がある人
- 代表税理士をリスペクトしている人
逆に事務所に対する共感の低い高スキルで経験豊富な人材、いわゆる「いい人」を採用すると、次のような弊害が生まれます。
- 離職するリスクが高い
- マネジメントしづらい
- モチベーションが低い
- 考え方、志向性が異なる
- 事務所の一体感が生まれない
つまり「いい人」を優先すると、入所後のマネジメントコストが上がるのです。一方、「合う人」を優先すると、次のように真逆の効果が生まれます。
- 離職するリスクが低い
- マネジメントしやすい
- モチベーションが高い
- 考え方、志向性が同じ
- 事務所の一体感が生まれやすい
これについて田中さんは「経験者や有資格者を重視する採用から、「合う人」の採用へシフトすることが大切です」と指摘。そのうえで、「合う人」を採用するための三つの必須条件として次のものを挙げます。
- 事務所の理念(ミッションやビジョン)を明確にする
- 事務所の価値観(行動指針やバリュー)を明確にする
- 面接で自分のことや事務所のことを熱く語る
事務所のミッション、ビジョン、バリュー(以下、MVV)を事前に知ってもらい、共感した人だけに応募してもらうと採用活動の効率が上がります。そのためにMVVを事務所のホームページや求人票に掲載し、「必ず読んだうえで応募してほしい」「共感できない人は応募しないでほしい」と明記することが大切です。
実例で見る求人票作成のポイント
ある求人媒体では2020年12月1日から2021年4月7日までの期間、事務所あたりの平均応募者数が4.03人だったのに対して、荻島宏之さん(認定「いい税理士」)が代表を務める株式会社start-with/荻島会計事務所(以下、start-with)には46人もの応募があったそうです。10倍を超える候補者を集めたstart-withの求人票には、どんな内容が書かれていたのでしょうか?
「求職票に四つのことを盛り込んだところ、我々の事務所と相性の良い採用候補者がたくさん集まってくれました」と荻島さん。四つとは次のものを指します。
- メインメッセージ:採用候補者にいちばん伝えたいメッセージを打ち出す
- ミッション:事務所の理念をしっかりと伝え、共感してくれる採用候補者の応募を促す
- サービス方針:当事務所が顧客にどのような価値を提供していくのか、採用候補者が提供できるようになる価値を伝える
- 求める人物像:どのような人と一緒に働きたいのか、どのような人が事務所に合うのかを伝える
これらの記述例をstart-withの実際の求人票から抜粋します。下に示したポイントとあわせてご覧ください。
メインメッセージの例
未来に向けて真剣に挑戦する「志ある経営者」のビジョンを共に実現するための仲間を募集しています!これからの税理士・会計事務所像を一緒に作っていきましょう!
- ポイント1:事務所の想いをストレートに表現する
- ポイント2:一緒に挑戦する仲間を求めているというメッセージを伝える
ミッションの例
設立から7年が経過し、新たなステージへ進んだ当事務所はミッションを刷新。「志ある経営者のビジョンを共に実現したい」を掲げることにしました。未来に向けて真剣に挑戦する人を支えることで、私たち自身も共に成長し、仕事に向き合う仲間の輪を広げていきます。
- ポイント1:ミッションを明確に伝える
- ポイント2:当事務所自体も未来に向けて挑戦していることをアピールする
サービス方針の例
【重要なのは実現可能な段階に落とし込むこと!】
私たちは経営者に対して第三者的に横からアドバイスをするだけではありません。ビジネスのアイデアが成功するかどうかの可能性をしっかり目利きしたうえで、必要なリソースを集めて実行できる段階まで落とし込んでいきます。
(中略)
このように私たちが提供すべき、あるいは提供できるはずのサービスの幅は非常に広く、換言するならば可能性に満ちているのです。
- ポイント1:事務所のこだわりを伝える
- ポイント2:やりがいや可能性を感じてもらう
求める人物像の例
【成長したいという意欲があれば大丈夫!】
もちろん最初からすべて完ぺきにこなす必要はありません。
(中略)
重要なのはその向上心です。私たちは採用にあたって、そうした内面を重視しています。お客様である経営者に寄り添い、先方の悩みや考えを理解しようと努力できるか。その姿勢があれば、スキルや知識は後からついてきます。「あの会社のことならだれよりも自分が理解している!」と胸を張れる担当者になってください。あなたにしかできない唯一無二の仕事を当事務所で見つけてみませんか?
- ポイント1:いちばん求めることを伝える
- ポイント2:できる!やりたい!と感じてもらう
カジュアル面談の実施
荻島さんは、求人票だけでは伝えきれない事務所のことを応募者により良く知ってもらうために、一次面接の前にカジュアル面談を実施しているそうです。
目指すべきは幕の内弁当ではなくハンバーグ弁当
第3部には株式会社レックスアドバイザーズの櫻井卓哉さん(HRコンサルティング部 部長)が登壇し、応募者が入社に至るまでのフェーズごとに気をつけるべきポイントを説明しました。レックスアドバイザーズは士業に強い人材紹介会社で、税理士事務所の採用を数多く手掛けた実績を持ちます。
採用には「応募」「書類選考」「面接」など6つの段階があり、各段階で意識すべきポイントが異なると櫻井さんは指摘します。応募が来ない、選考辞退が多いといった悩みを抱える税理士事務所が求人票を作成する場合、次の三つが重要になるそうです。
- 自社の特徴を整理する
- 採用ペルソナを設定する
- (採用ペルソナにとって)必要な情報を訴求する
* * *
人材募集においては事務所のMVVをホームページに掲載することが大切です。ホームページをまだ持っていない方、メッセージ性の高いホームページにリニューアルしたい方はぜひ参考にされてみてはいかがでしょうか。
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