税理士事務所の人材育成手法4選 経営者との会話を通してスタッフは成長する

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独立開業して事業規模を拡大させる過程で、代表税理士がぶつかる壁がスタッフの採用と育成です。信頼できるスタッフを育てなければ、質の高いサービスをより多くの顧問先へ提供することは困難です。この記事では、いい税理士協会が開催したセミナーなどを振り返りながら、先行している税理士事務所の人材育成についての取り組みをご紹介します。

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必要なのは「正解探し」を共にしてくれるスタッフ

「ヒト、モノ、カネ、情報」という経営資源の中で、成長するのは人だけだと荻島宏之さん(株式会社start-with/荻島会計事務所 代表)は話します。

製販分離セミナーリポート 荻島さん吹き出し画像荻 島
環境や顧客ニーズの変化に適応し、事務所が成長していくためにも、スタッフの成長は欠かせません。スタッフの成長にいちばん必要なのは、顧問先の経営者と会って話をする機会を増やすことです。もちろん、経営者とただ会えばよいというわけではありません。成長効果を最大化するうえでも、経営者と会話のキャッチボールをするための事前準備が大切になります。

荻島さんが指摘するように、税理士事務所でスタッフを育成していくには、場数を踏ませること、とりわけ顧問先である企業の経営者とのコミュニケーションの機会を数多く作ることが大切です。経営者と適切にやり取りするには、話術を磨くだけでは不十分。事前の準備が欠かせません。この準備にどれだけ真剣に取り組むかで、スタッフの成長のスピードは決まると言っても過言ではないのです。

10人のスタッフを抱える荻島さんの事務所では、一つの顧問先を何人かのスタッフがチームを組んで担当します。そのため経営者と会うための事前準備も、複数人でのミーティングを通して進める形になります。その際、先輩・後輩という立場は忘れ、お客様目線を大切にしながら議論することで、一人では気づけない視点に思い当たることもあるのだとか。

今ではミーティングに加え、スタッフだけで自主的に朝の勉強会も実施。実際に経営者から受けた質問や相談事、自分が担当する顧問先が抱えている課題などの事例を持ち寄って議論しているそうです。

製販分離セミナーリポート 荻島さん吹き出し画像荻 島
税務や会計にはただ一つの正解が存在します。しかし、これからの税理士事務所に求められる経営支援という仕事では、正解が一つとは限りません。顧問先ごとに課題が違い、正解の形も違います。私たちは、正解を探りながら先に進んでいかなければなりません。それを一緒にやってくれるスタッフが必要なのです。

小規模な事務所ほど人材育成に課題を感じている

Mikatus(ミカタス)株式会社が2020年10月に実施したアンケート調査によると、30%の税理士事務所が「代表税理士自ら教育を担当している」と答えた一方で、「手の空いている職員が担当」が18.9%、「定まった教育方針はない」が35.6%と、5割以上の事務所で明確な教育体制が整っていないことが明らかになりました。

スタッフの教育環境のグラフ

同様にスタッフの学習環境についても、4割近い事務所が「各自の自習に任せている」と回答するなど、スタッフの学習を積極的にサポートしている事務所が少ないという結果になりました。

スタッフの学習環境のグラフ

育成環境と学習環境の両面において、制度が整っている税理士事務所は少数派です。そのことを裏付けるように、おおよそ6割の税理士事務所が育成状況に何かしらの課題を抱えていることも明らかになりました。

スタッフの育成状況への満足度のグラフ

スタッフを育てる環境に課題を感じている事務所が多いことはわかりました。では100名を超えるような大所帯の事務所では、どのように人材育成を行っているのでしょうか?

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大手事務所ではこう育てる、NBCグループの場合

グループ全体で140名を擁するスタッフを抱えるNBCグループでは、次の三種類の研修を実施して、スタッフが日頃からスキルアップするための土壌を作っています。

①新人向けの研修:グループ傘下の各会社に対する理解や、理念や思想の継承に主軸を置く研修。税務監査や財務分析、相続など、基本的な内容やグループ独自のやり方についてプレゼンテーションを通して学ぶ
②社員税理士向けの研修:サービス品質の向上を目的とする研修。全国の拠点における税務調査案件や、決算チェックで気になった点や気をつけなければいけないポイントなどを共有する
③全スタッフ向けの研修:毎月、各拠点が持ち回りで担当するオンライン研修。事業承継税制やM&Aの事例、経理の業務改善の事例など、グループ全社での周知に値すると判断した情報や、実際に顧問先に提供したサービスなどの情報を共有する

NBCグループの野呂泰史社長は、同社の人材育成制度について次のように語ります。

自分の給与は自分で稼ぐ 新卒を2年で一人前にする税理士事務所の人材育成制度の丸アイコン野 呂
当グループでは、自分の給与分を稼げるようになることを一人前と定義しています。新卒者はだいたい2年、未経験の中途採用者は1年半ほどで一人前になります。新しく入社するスタッフはこの2年なり1年半なりを育成期間と捉えて、その間にお客様を一人で担当できるようになるなど、目に見える形で成長してもらいます。達成できた場合はその結果が給与や賞与に反映される仕組みになっているので、モチベーションの向上にもつながっていると思います。

NBCグループは、もともとは北海道札幌市でスタートした小規模な税理士事務所。それが140名を超える大所帯になったのには、1986年の創業時から現在にまでつながる次の想いがあったからだと野呂さんは話します。

自分の給与は自分で稼ぐ 新卒を2年で一人前にする税理士事務所の人材育成制度の丸アイコン野 呂
「間違えました、すみません」「失敗しました、ごめんなさい」では済まされないのが税務の世界です。正しくて当たり前の経営数字や納税額に誤りがあったとしたら、税理士事務所の信用にかかわります。たった一つの失敗が税理士や税理士事務所にとって命取りになりかねないのです。もちろん、お客様にご迷惑をおかけするのはもってのほか。弊社が開業当初から人材育成に力を入れてきたのは、そうした失敗を防ぎ、経営の基礎となる会計や税務を適正に行うためです。

経営者とのコミュニケーションに役立つ財務分析ツール

Mikatus(ミカタス)株式会社が2020年1月に開催した座談会では、会計システム「A-SaaS(エーサース)」に搭載された「キャッシュ・イズ・キング(以下、CiK)」という財務支援機能が、スタッフの育成に役立つという意見が登壇者たちから出されました。

>>>キャッシュ・イズ・キングについてはこちら

CiKは、過去の会計データをもとに企業の1年後の財務状況を分析するシミュレーションツール。これを使うことで経験の浅いスタッフでも、資金繰りについて経営者と意見を交わし、打ち手を検討できるようになります。

代表税理士は同じ「経営者」という共通点があるため、顧問先の経営者とスムーズに意思疎通を図ることができます。一方で、事務所のスタッフは働く対価として給料を受け取る会社員。働く目的や考え方、リスクの大きさなど、さまざまな点で経営者とは異なります。事務所のスタッフが経営者と有意義なコミュニケーションを取るには、この大きな溝を越える必要があります。

そのキッカケの一つとしてCiKを使いたいというのが、座談会に参加した各税理士の考えです。CiKを使うことで、経営者の最大の関心事であるキャッシュ(現金)の話題を通して、スタッフが経営者とより密なコミュニケーションを取れるようになるのです。

*     *     *

人材育成という観点から事務所運営のあり方について見てきました。

スタッフを育成するには、一にも二にも場数を踏ませること。とりわけ顧問先の経営者との会話を通してスタッフは成長していくというのが税理士の一致した意見のようです。その意味でもCiKなどの有用なツールの活用を強くお勧めします。

いい税理士協会では、顧問先の業績向上に貢献する「いい税理士」を目指す方を対象に、セミナーなどで情報発信を行っていきます。ぜひご期待ください。

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