3期連続で増収増益!悩める経営者の背中を押した税理士の覚悟とは

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「いかに中小企業にキャッシュを残させるのか」は、「いい税理士」を志す税理士にとって至上命題と言えます。しかし、時には悩みや不安を抱える経営者の背中を押して、お金を使わせることも必要なようです。

>>「いい税理士座談会 in 大阪」の内容についてはこちらをお読みください。

今回は、2019年8月にMikatus(ミカタス)が開催した「『いい税理士』座談会 in 大阪」にご参加いただいた、税理士法人森本会計の森本琢磨さんのお話をご紹介します。森本さんの支援した顧問先が設備投資に踏み切り、3期連続で増収増益を達成した事例をお届けします。

▼支援により達成した成果
・3期連続増収増益

経営者の話を聞くほどに、「もっと伸びる」という想いは強く

Q.どのような顧問先の支援をされたのでしょうか

兵庫県にある、日傘の製造販売を行っている会社さんです。当時の顧問税理士さんが体調を崩されてしばらく休業することになり、新しい税理士を探していらっしゃるタイミングで知り合いました。そのときすでに売上は4億円、純利益は6000万円と、事業としては成功していました。
事業成功の要因は、圧倒的な商品力にありました。この会社が扱っているのは特殊な日傘で、紫外線、赤外線、可視光線など、地上に届く全ての光を100%カットすることができます。遮光率99%という日傘はよくありますが、100%を達成している商品はとても珍しいのです。そのため、1万円を超える高単価で販売することができます。

一般的に日傘は5月頃から売れ始め、夏前にはピークを迎え注文が殺到します。私が前任の税理士さんから引き継いだのがちょうど5月で、その時にはすでに品切れ状態でした。職人が一本ずつ作っているため、生産体制が追い付いていなかったのです。
さらに、この会社の日傘はインターネットでしか販売していないのですが、ECサイトのサーバーが非常に脆弱でした。注文が殺到すると回線がパンクしてサーバーが停止してしまうほどです。それでも、人気は留まることなく、ブランド力は日増しに高まっていました。

▼顧問先の概要

業種 日傘の製造販売
所在地 兵庫県
売上規模(年商) 3億円以上
役員・従業員数 約30人
業歴 約10年
代表者の年齢 60代

Q.事業は好調なのに、業績向上のための取り組みをされたのはなぜですか?

お付き合いが始まってから、会社のこと、経営者のことを知れば知るほど、この会社はもっと業績を伸ばせるのになぁ、と感じるようになったからです。
商品力は十分にありましたし、紫外線アレルギーに苦しんでいる人は多く、需要がある。もっと多くの人にこの日傘を知ってもらうべきだと。

森本琢磨様 by Lanchor(ランカー)

しかし、店舗を構えて販売する、という戦略はこの会社に合っていないとも感じました。業務負荷や固定費が増えてしまう上に、ブランド力も下がってしまうと思ったからです。
そうなると、改善しなければならないのはITシステムと生産力です。特にITについては、脆弱なECサイトだけでなく、受発注システムについても改善が必要でした。

「私は、行けると思います」覚悟を決めて、経営者の背中を押す

Q.森本さんは、ITシステムに関する知見をお持ちだったのでしょうか?

そんなことはありません。ですが、ITに関する知見は無くても、お客様の業務フローがどのようになっているのか、どこを改善すべきなのかを考えることはできます。そのためには、業務内容を細かく知ることが重要です。
このときは、業務フローのボトルネックがどこにあるのかを把握するために、自分でECサイトから日傘を購入してみました。そのうえで、自分の購入履歴を見せてもらいました。自分の注文がどのように受注され、どのタイミングで集荷されて配送されているのか。処理の流れを一緒に確認させてもらいました。
その結果、次のようなことが分かりました。

  • システムが複数に分かれているため受発注業務が非効率になっている
  • 複数のシステムに同一の内容を入力する必要がある
  • 手作業でのデータ連携やシステム外での集計作業が必要になる

これらの課題を解消するために、ITシステムを刷新する設備投資を検討してもらいました。

Q.設備投資について、経営者はどのような判断をされたのでしょうか?

システム改修に必要な費用の見積もりをとったところ、およそ8,000万円でした。1年間の利益以上の金額を投資することなります。
経営者とは何度も話を重ねました。「社長は会社をどうしていきたいのですか?」という問いかけを、打ち合わせの度にしていました。経営者は、設備投資すべきかどうかずっと迷っていましたね。後継者である娘さんに、今よりもっといい会社にして残してあげたい、でも失敗するのは怖いと。

森本琢磨様 by Lanchor(ランカー)

「私は、行けると思いますよ」
最後は、経営者の背中を押してあげるのが私の仕事でした。その一言に経営者も腹を決めてくれて、システム改修への投資を決断したのです。
経営者にお金を使わせるための後押しは、勇気と覚悟がいります。規模の大きな設備投資については特に。従業員を一人雇うのとは訳が違いますから。しかし、この会社さんに関しては、在庫が尽きるまで売れているのは事実でした。受発注のフローを改善し、生産力も高められれば、投資に見合う十分な効果を得られるのは間違いないと思ったのです。

Q.その後、業績はどうなったのでしょうか

わたしたちの思惑どおり、売上も利益も順調に伸びてきました。売上は4億から6億、更には10億円にまで達しました。純利益も順調に、9000万円、1億5000万円と伸びています。
5月に売り切れていた商品は、今ではもっと早く、2月には品切れになってしまう程です。毎月のように生産体制は強化していますが、それでもまだ生産が追いついていない状況です。逆に言えば、まだまだ伸びしろがあるということですね。

この経営者さんは60代なのですが、実は業歴が10年ほどと、そんなに長くはないんです。元々は高価格帯の雨傘を個人事業主として販売していました。しかし、それが全くと言っていいほど売れなかったのです。
「このままいくと、もう死ぬしかないんじゃないか……」という経験もされています。今の日傘の製造販売の事業がどんなに上手くいっていても、ふとした時に過去のつらい経験を思い出し、不安になってしまうそうです。
お客様と食事をご一緒させていただくと、毎回のように過去のつらい話をされます。「何回同じ話すねん!」と思うのですが(笑)、そんな気持ちとは裏腹に、私も毎回ぐっと胸が熱くなります。この経営者さんにとって、このシステム投資は一大決心でした。成果が出て本当に良かったと思っています。

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