セオリーが正しいとは限らない!金融機関を巻き込み資金調達に成功!

田中常彦様 by Lanchor(ランカー)

税理士業界の今後を担う「いい税理士」として活躍する為に、具体的にどのような活動をすべきなのか。今回は2019年8月にMikatus(ミカタス)が開催した「『いい税理士』座談会 in 大阪」にご参加いただいた、田中常彦税理士事務所の田中常彦さんのお話をご紹介します。

>>「いい税理士座談会 in 大阪」の内容についてはこちらをお読みください。

中小企業の業績向上に貢献するためには、経営者との距離を縮め、本音を引き出す関係性を作ることが大切だと話す田中さん。経営者の本音や不安にどのように応え、どのように悩みを解決していったのか見てみましょう。

▼支援により達成した成果
・資金調達の支援により新店舗をオープン 売上が1.5倍へ

ひしめく競合、鈍る売上、働けども働けども数字は伸びず

どのような顧問先の業績向上に貢献したのでしょうか

整骨院を経営しているお客様の、新店舗出店のための資金調達を支援しました。経営者は私と同い年で、もう10年くらいの付き合いになります。

1店舗目をオープンした当時は、周辺にライバルがいない状態でした。経営者がひたむきに頑張って集客したこともあり、順調に売上を伸ばすことができました。来客数が増加していくのに合わせて従業員の数も増やし、店舗は順調に成長していきました。一緒に働く従業員のこともちゃんと考える素敵な経営者で、資格取得を支援するなど、従業員のキャリアプランの設計にも力を入れていました。

しかし、時が経つにつれて、店舗の周りに競合店が増えていきます。それまでは順調だった客足も次第に減り始め、売上が伸びなくなってしまいました。来客数が減ってしまうと、従業員を雇い続けることさえも難しくなります。

何とかしてお客様を呼び込もうと努力するも、なかなか上手くいきません。競合店との顧客獲得競争は激しさを増し、働けども働けども数字が伸びない。次第に、経営者の表情が暗くなっていくのを私も感じていました。

▼顧問先の概要

業種 療術業
所在地 大阪府
売上規模(年商) 3,000万円以上 5,000万円未満
役員・従業員数 約10人
業歴 約9年
代表者の年齢 40代

経営者は弱音を吐けない?本音を引き出して気持ちを前へ

どのような経緯で2店舗目を出店することになったのでしょうか

もちろん、すぐに2店舗目の出店を決めたわけではありません。大きな初期投資が必要になりますし、固定費も膨らんでしまいます。業績改善のために取り組む施策としては、リスクは非常に大きいといえます。

経営者自身も、1店舗目をどうにかして立て直す方法はないか、必死になって模索していました。しかし、やはり競合の勢いが勝り、どうにも1店舗目の収益を改善していくことは困難でした。

そんな折、経営者と食事に行く機会がありました。閉塞感に経営者が不安を抱えていることは分かっていましたが、そう簡単に他人にさらけ出せるものでもありません。面と向かって、本音を吐き出してもらうことが必要だと思いました。

田中常彦様 by Lanchor(ランカー)

食事をしながら、腹の中に抱えている悩みだけでなく、起業する前の話も色々と伺いました。元々、柔道をやられていて、柔道教室で子どもたちに柔道を教えていたそうです。そんな話から、「稽古中に怪我をしてしまった子どもたちはどうやって治療するのか?」「もしかしたら、そんな子どもたちがお客さんになるのでは?」「怪我予防のための施術もニーズがあるかもしれない」といった議論になりました。

さらに、その柔道教室の近くには大学があり、スポーツをやっている学生が多い。しかも、競合となる整骨院はありませんでした。「2店舗目をそこに出店することができれば、状況は好転するのではないか?」そんなアイデアに対して、「それはいいなぁ!」と経営者の表情が明るくなったことを覚えています。

新店舗出店のハードルは決して低くはありません。しかし、悩みを吐露して気が楽になったのか、あるいは閉塞感の中に一筋の光明を見出したのか。その経営者は、立地やニーズ調査など、2店舗目の出店に向けて前向きに検討を始めたのです。

融資を引き出す事業計画を、金融機関と一緒に作る

2店舗目を出店するために、どのような支援をおこなったのでしょうか

新店舗を出店するためには、当然設備投資のために多額の資金が必要になります。しかし、業績が悪化している中ですから、潤沢な資金はありません。そのため、銀行に支援してもらうしか手立てはありませんでした。

まずは日本政策金融公庫にお願いしに行きました。そこで「融資を実行するには材料が乏しい、もっと詳細な事業計画を作ってほしい」となり、経営者と一緒に事業計画書を作成しました。

公庫からは融資してもらえることになりましたが、それだけで出店費用をまかなうことはできませんでした。他の銀行にも頼るしかないということで、資金調達のための活動を継続しました。

1店舗目がうまくいかなくなったから新店舗を……その理由で銀行融資は難しいのでは?

その通りです。新店舗の出店がいかに有意義なのか、いかに収益に貢献するのかを伝える必要がありました。出店先の立地についても細かく説明しました。スポーツで怪我をする学生がどれだけ多いか、競合となる店舗がいかに少ないか、需要や競合を考えたうえでの事業計画を作り、説明をしました。

田中常彦様 by Lanchor(ランカー)

成功の一番のポイントは、私が普段からお付き合いしていた銀行さんを巻き込むことができたことだと思います。事業計画についても、銀行さんが一緒に考えてくれたり、様々な提案をしてくれました。普段からのコミュニケーションがあったからこそ、銀行との協力体制を築けたのだと思います。

鍵を握るのは、経営者が腹の中をさらけ出せるかどうか

 中小企業の経営を支援するにあたり、重要なポイントはなんでしょうか

経営者に悩みを吐き出してもらうことだと思います。経営者と私たち税理士の間に溝があると、本音を引き出すことができません。経営者が今どんなことで悩んでいるのか、どんなことをしたいのかといった、腹の中をさらけ出してもらえるかどうか。その関係性を作れるかどうかが重要だと思います。

このお客様も、資金調達の支援をさせてもらうことになったのは食事会がきっかけでした。我々税理士が事務所を経営していくうえで、お客様からいただく顧問料に対してどれだけの時間をかけるか、つまり費用対効果はとても大事です。しかし、本音で話してもらえる関係性を築くためには、時として採算度外視で時間を使ってコミュニケーションを取ることで、距離を縮めていくことも必要になります。

もちろん、やみくもに時間を割けば良いということではありません。しかし、私はお客様である中小企業の業績向上に貢献し、その存続と発展を支えることが自分の使命だと思っています。だからこそ、経営者と親密な信頼関係を築くために時間を投資することも必要だと考えています。

これまで、私のお客様で廃業した会社さんは1社もありません。経営者との信頼関係を大切にするということが、結果に結びついているのだと思います。お客様の業績向上に貢献できれば、顧問料の増加にもつながるし、口コミで新しいお客様も増えていきます。結果的に、事務所にとっても売上と利益の増大に結びついていくのではないでしょうか。

今回ご紹介したお客様は、銀行の支援もあって無事に2店舗目を出店することができました。売上もあがり、軌道に乗ってきています。経営者が集客を頑張り、来店してくれるお客様のために従業員が頑張っています。今後は1店舗目は現状を維持して、2店舗目を成長させていく方針です。この先の事業の行く末も見守っていきたいと思います。

 

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