【中小企業社長インタビュー】自社のビジネスを理解しない税理士はいらない

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株式会社デージーネット 代表取締役 恒川裕康さん

愛知県名古屋市を拠点とする株式会社デージーネットは、オープンソースソフトを活用するシステム開発会社です。代表取締役を務める恒川裕康さんが奥さんと二人で創業して今年で23年、40名規模に成長しました。

かつて役員報酬を巡って意見が対立した顧問税理士を代えた経験を持つ恒川さんは、税理士に何を求めているのでしょうか?話を聞きました。

お話をうかがった方:株式会社デージーネット 代表取締役 恒川裕康さん
愛知県出身。名古屋大学理学部卒業、大手ソフトウェア開発会社に入社。1999年にデージーネットを設立し、代表取締役に就任。2007年からドラッカー塾に通い経営について学ぶ。技術者育成のためのコーチとしての資格を取得。著書に『ドラッカーさんに教わった IT技術者のための50の考える力』(秀和システム刊)など。
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日本では珍しいOSS専門のシステム開発会社

Q.貴社を創業した経緯について教えてください。

恒川社長(以下、恒川):以前、勤めていたメーカーでは、オープンソースソフト(以下、OSS:ソースコードを公開している無料のソフトウェア)を使ったシステムの開発を主導していたのですが、OSSを使ったシステム開発はメーカーとはあまり相性が良くないと感じていました。

というのも、モノを売りたいメーカーの中で無料のOSSを使うことには矛盾があると思ったからです。だったら自分でやってみようと思い、デージーネットを創業しました。

Q.OSSに着目した理由を教えてください。

恒川:インターネットはもともと、ほとんどが無料のソフトウェアでできています。例えばWebブラウザなどは無料で配布されているものばかりです。

ただ、日本では製品を扱うメーカーや商社が主体となってビジネスを立ち上げてきた経緯があり、コストが高いソフトウェアを使わざるを得ない状況になっています。

言葉を選ばずに言うと、馬鹿馬鹿しいことだと思います。確かにビジネスとしてはそのほうが旨みがあるのかもしれませんが、使う人にとって良いこととはとても思えません。

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税理士に求めるものはビジネスに対する理解

Q.今の顧問税理士はどうやって見つけましたか?

恒川:前任の顧問税理士さんとは意見の合わない部分がありまして、ビジネスマッチングサイトに「税理士さん募集」と広告を出しました。応募してきた数人から選ばせていただいた形です。

Q.前任者の何が気に入らなかったのですか?

恒川:デージーネットは私と妻が二人で立ち上げたのですが、初年度は4月から稼働して12月までに1,600万円の売上がありました。IT企業である弊社の場合、原価は限りなくゼロに近いので、1,600万円は営業利益とほぼイコールです。ただ、当時の顧問税理士さんが役員報酬はあまり取らないほうがいいとおっしゃったため、役員報酬は少なめに抑えて半分以上は会社の内部留保に回しました。

2年目になると内部留保をさらに増やし、売上の大半をそちらに回すように求められたんです。これでは一生懸命やっている甲斐がないと不満が募りました。

社員はもともと私と妻の二人だけでしたし、ITベンチャーなので設備投資する先もありません。内部留保を増やしてもあまり良いことがないと思ったんです。

考えてみると、私たちの本拠地である名古屋市の周辺には製造業が多く、ITベンチャーの考え方を理解していただける方はごく少数。そのことが新しい税理士を探し始めた直接の理由です。募集に当たっての条件は、IT企業を担当した経験がある人、ということに決めました。

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ITベンチャーが自計化にこだわる理由

Q.貴社は原則として自計化していると伺いました。

恒川:なにせIT企業ですから、会計処理と言っても難しいことはありません。主に計上するのは労務費用や消耗品代くらいです。それなら自分でやったほうがいいと思ったんです。

もちろん、こうした数字は経営判断につながるものですから、自分で把握しておきたいという想いもあります。また私自身、数字をこねくり回すことが好きなので、人に任せる意味を見出せなかったことも理由の一つです。

Q.顧問税理士にはどんな相談をしますか?

恒川:特殊な項目があった時に仕訳をどうするか、といったことを相談します。例えば減価償却についてはちょっと自信がないので、顧問税理士さんにも確認していただきます。あるいは海外からドル建てでソフトウェアを購入した時など、仕訳をどうするか相談したりします。

Q.顧問税理士からのアドバイスで特に印象に残っているものはありますか?

恒川:二つあります。一つ目は保守費用の会計処理についてです。

税務調査で、「クライアントに納品したシステムの保守費用は1年以内であっても前受金処理をするように」との指導を受けました。これは損益に対するインパクトが非常に大きく、また集計も大変な内容です。

実際にどのような会計処理をすればよいのか、税理士さんには契約や請求、入金などの業務の流れを聞いていただき、段階に分けた会計処理を指導してもらいました。それが後日のシステム化にもつながったと思います。

Q.二つ目は何でしょうか?

恒川:教育や研究開発の補助金についてです。

国の施策で、教育や研究開発に関する補助金がありますが、デージーネットでは多くのことを内製化しているためそれらを使えませんでした。補助金を利用するにはどうすればよいか、という点について具体的なアドバイスをくれたのが今の顧問税理士さんです。

部分的に外部委託するものを増やしたり、社内で行う研修の環境を整えたりすることで、補助金の申請ができるようになり、非常に助かったのを記憶しています。

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「いい税理士」の条件は自計化を助けてくれること

Q.Lanchor(ランカー)では顧問先の業績向上に貢献する税理士を「いい税理士」と定義して応援しています。恒川さんが思う「いい税理士」の条件を教えてください。

恒川:自社内で会計処理を行えるように指導していただける人、だと思います。

会計は経営判断をするために必須の業務です。そのため、できるだけ作業を迅速かつ正確に行うことが求められます。

しかし会計処理では判断に迷う項目も多く、またデータの入力ミスなども発生しやすい業務でもあります。したがってミスがあっても丹念に指導をしていただけることはとても重要です。また再発防止方法や自分でチェックする方法などを一緒に考えてもらうことで、自立して作業していけるようになります。

時には考え方を教えてもらったり、処理方法を議論したりすることで社内の教育やシステム化にもつながっていきます。

税理士さんの中には、ほとんどの会計処理を代行してくれる方もいると思いますが、私は自計化できるように指導してもらえることが重要だと考えています。

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Q.今後の目標を教えてください。

弊社はOSSを使ってシステムを構築する企業です。近年、働き方改革や感染症の流行により、リモートワークやペーパーレスなどが注目されています。こうした状況の中、弊社ではオンライン会議システムやチャットシステム、文書管理システムなどのニーズにOSSを使って応えてきました。

このような事業を展開している企業は日本国内にはほとんどありません。日本企業のITコストを低下させていくために、あるいは日本国内のさまざまなインターネットサービスを実現するためには、社会的にも非常に重要な事業だと考えています。

しかし無料のソフトウェアを扱っているため、莫大な収益を上げるビジネスモデルにすることは難しいのが現状です。

そんな中でも弊社ではさまざまなOSSの研究も行い、日本国内への紹介を続けていきます。今後は企業や自治体のDX化が進むにつれて必要となるソフトウェア、製造業で期待されているIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)などの技術をOSSで実現することに取り組んでいきます。

そして事業の中で収益をきちんと確保し、安定的なサービスを提供していくには、迅速な会計処理や原価管理などをしていく必要があります。そのため弊社では、今後も会計のシステム化を進め、タイムリーに経営指標が把握できる環境を作っていこうと考えています。

*     *     *

「いい税理士」の条件を問うと、「自社の強みを活かし、弱みを補ってくれる人」とも答える恒川さん。現在、デージーネットの顧問税理士は、遠く離れた東京都日野市に事務所を構えています。自計化を丁寧に指導してくれた顧問税理士とは、空間を超えた信頼関係で強く結ばれているようです。

取材協力 株式会社デージーネット

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