資金調達の新たな選択肢 税理士が知っておくべき「オンラインレンディング」とは
住信SBIネット銀行 ファイナンス事業部
SMEトランザクションレンディンググループ グループ長 眞部友輔さん
申し込みから最短30分程度で融資が受けられる「オンラインレンディング」が、中小企業の新たな資金調達の選択肢として注目を集めています。
この記事では住信SBIネット銀行の眞部友輔さん(ファイナンス事業部SMEトランザクションレンディンググループ グループ長)にお話を伺い、税理士として知っておくべきオンラインレンディングの基礎知識を説明したうえで、同行のサービスである「事業性融資dayta」についてご紹介します。
オンラインレンディングの特徴
Q.オンラインレンディングの特徴を教えてください。
眞部さん(以下、眞部):通常の銀行融資では、3期分の決算書を持って銀行へ出向き、銀行員と面談して審査を受け、借りられる金額や金利などの条件が決まり、ようやく借入が成立する、という流れになっています。手続きが完了するのに2週間から1ヶ月程度かかるのが一般的です。
それに対してオンラインレンディングでは、銀行口座の入出金の明細や、クレジットカードの決済情報、会計ソフトにおける仕訳などのデータをもとにAIの与信モデル(人工知能)が融資条件を算出します。決算書を根拠に判断するものとは違い、手元にあるデータをもとに審査するため、従来の融資に比べて申込から融資実行までのスピードが速いという特徴があります。
またオンラインレンディングの特徴として、①金利が高めである、②多額の融資を長期間受けるよりは少額の融資を短期間受けるのに適している、という点も挙げられます。
Q.利用者にとってどんなメリットがありますか?
眞部:一般的に面談や書類の提出を必要とせず、すべてがオンラインで完結するため、手続きにかかる手間が少ない点は大きなメリットの一つです。
また従来の銀行融資では銀行の担当者とどれだけ親密にしているかなど、担当者によって融資が引き出せたり引き出せなかったりするという話も伺います。オンラインレンディングではデータに基づいて借入条件を平等に判断するので、恣意性が入る余地がない点もメリットだと言えると思います。
二度目の融資を引き出す際の壁
Q.オンラインレンディングの社会における存在意義について教えてください。
眞部:企業には①創業期、②成長期、③安定期、④成熟期という4つのステージがあると言われています。このうち①創業期については日本政策金融公庫の創業融資や、地銀などのプロパー融資や保証協会付きの融資を得て事業がスタートすることが多いと思います。
表:企業の成長ステージにおける資金調達手法について出典:住信SBIネット銀行(税理士などへのヒアリングに基づき作成)
一方で、①創業期や②成長期の企業が二度目の融資を受ける時、まだ創業して3期に至っていない段階にもかかわらず、融資審査の必要書類として3期分の決算書を求められるケースがあると聞きます。あるいは事業自体は順調でも、創業期の融資をある程度返済しないと新たな融資が受けられないケースがあるという話も伺います。
こうした成長性のある企業が二度目の融資を受けられないという問題を解消するために、創業期から成長期の企業を主たる対象として融資を行うのがオンラインレンディングです。あらゆるデータを駆使して企業の成長ステージを支えることに、オンラインレンディングの社会的な存在意義があると思います。
私どもからすると、オンラインレンディングを使い続けていただくのはありがたいのですが、いずれは卒業してメガバンクや地方銀行などの融資に移行していくことも想定しています。銀行融資の言わば隙間を補うサービスという側面を持つのがオンラインレンディングだと思っています。
Q.融資までのスピードが速いことで、融資の精度に影響が出ることは考えられますか?
眞部:メガバンクが提供するオンラインレンディングでも「最短で申込から2営業日目には入金できる」と謳っているところがあります。従来の銀行融資に比べると速いという点はご理解いただけると思います。
銀行融資では、企業の事業計画をもとに事業性を評価して貸し出しを行います。貸し出した後も面談を重ね、事業内容に懸念がある場合には経営指導を行うこともあります。デフォルトが起きないように付き合っていくのが従来の銀行融資の特徴と言えます。
一方でオンラインレンディングでは、一定程度のデフォルトが発生することを前提としており、その分、金利を高く設定しています。一般に金利の中にはデフォルト発生にかかるコストも含まれていて、例えばAIの与信モデルがデフォルトの平均確率を5%だとはじき出した場合、100社の融資先に対して5社が倒産しても利益が出るように設計しているのです。
銀行融資がデフォルトを許容しづらいビジネスモデルであるのに対して、オンラインレンディングはデフォルトが起きても耐え得るように設計しているビジネスモデルです。この点が従来の銀行融資と異なる点だと言えます。
Q.オンラインレンディングを利用する際に、借りる側が気をつけるべき点はありますか?
眞部:必ずしも借りたい時に借りられるとは限らない点でしょうか。オンラインレンディングでは商品によっては、借入条件が一定時期に機械的に決まるため、希望した時期に借りられないケースも生じ得ます。
地銀や信金などのメインバンクを別に持っておき、基盤となる資金を借りたうえで、短期資金が必要になった時などにオンラインレンディングを上手く組み合わせて使うというのが賢い使い方だと思います。
Q.オンラインレンディングについて知ることで、税理士にどんなメリットがありますか?
眞部:資金調達の手段を複数提案できることがメリットの一つでしょうか。
銀行融資が難しい場合、ビジネスローンやファクタリングを案内することが多いと伺いますが、そうした資金調達の選択肢の一つとしてオンラインレンディングを加えることができます。
オンラインレンディングでは、普段から使っている銀行口座や会計ソフトなどの情報をもとに融資を受けられるので、顧問先に対して「特別なことをしなくても、通常の事業活動で銀行口座や会計ソフトを利用していれば、資金調達につながる可能性がある」という点をご案内いただけます。
住信SBIネット銀行の「事業性融資dayta」のメリット
Q.貴行のオンラインレンディングサービス「事業性融資dayta(デイタ。以下、dayta)」の特徴を教えてください。
眞部:概要は表にまとめたとおりです。
表:daytaの概要
融資可能額 | 50万円~3,000万円(10万円単位) |
借入回数(期間) | 返済回数3回(最長4ヶ月未満)、6回(最長7ヶ月未満)、12回(最長13ヶ月未満)から選択 |
利用資格 | 住信SBIネット銀行の定める条件を満たしており、「借入条件のお知らせ」を受け取っている法人 |
融資可能時期 | 最短当日 |
申し込み方法 | 「借入条件のお知らせ」に記載のある申し込みページ |
※所定の条件を満たす法人に対して、借入条件(借入可能額および借入利率)を住信SBIネット銀行がメールなどで知らせます。daytaは、その案内を受け取った方のみが利用できる商品です。
借入回数が最大12回になっていることからも、短期の運転資金を調達するための融資商品だとご理解いただけると思います。また申し込みは5分程度で済み、早ければ申し込みから30分程度で入金される点も、他社にはないスピードだと言えます。
当行はインターネット専業銀行ということもあり、24時間365日、いつでもお申し込みいただける点もご好評いただいています。
Q.コロナ禍がdaytaに与えた影響はありますか?
眞部:コロナ禍を受け、初めての借入をdaytaで行う方が増えてきています。例えば自宅を本社として登記し、多額の設備投資や創業期の融資を必要とせずに事業を始めた方が、ここに来て運転資金として借入が必要になるケースがあります。しかしながら地銀や信金などですぐには融資を受けられず、当行のサービスを利用する方が増加しているのです。
当初は創業期の融資を受けた後、事業拡大のため二度目の融資を受けたい方を主たる対象としていたのですが、当行が意図していなかったところからのニーズがあり、今後はそうした層もターゲットにしていきたいと考えています。
Q.最後にdaytaの今後の展開について教えてください。
これまで、税理士の方々を通じて中小企業の皆様のご意見を伺いつつ、商品開発を進めてきたものがdaytaです。その魅力についても、税理士の方々から顧問先の皆様へ広めていただいてきました。
今後は、母数となる当行の法人口座の利用者数を増やしたうえで、①申し込みから融資実行までにかかる時間をさらに短縮する、②貸出回数および期間を伸ばす、③当行だけではなく他行の口座情報も含めて融資額を算出する仕組みを作る、という3点の実現に向けて努力していく所存です。
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従来の銀行融資に比べ、スピーディーに借入を行えるオンラインレンディング。その中でも最短当日の融資を実現する住信SBIネット銀行のdaytaについてご紹介しました。短期の借入を必要とする中小企業の新たな選択肢として、今後も目が離せないサービスの一つと言えそうです。
取材協力 住信SBIネット銀行
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