独立1年で80社開拓!若手税理士の営業力にせまる

税理士に限らず、「営業」という言葉自体に苦手意識を持つ人は多いものです。
断られるのが嫌だ。知らない人に自分や自社の魅力を伝えるのは気が引ける。しかし税理士として顧問先を獲得していくためには、営業力は欠かせないスキルの1つです。
そんな多くの方が苦手とする営業という分野で、逆に力を発揮し、独立1年目にして80社もの顧問先を開拓した税理士が、川崎に事務所を構える西山優一郎さんです。
1年目にして80社の開拓はどうしたら達成できるのでしょう。高い営業力の秘訣を教えていただきました。
お話をうかがった人:西山税理士事務所 西山優一郎さん
経営者であった祖父の影響で、税理士の道を志す。
大手公認会計士事務所、大手税理士法人にて合計10年間、税務・財務・経営コンサルティングに携わる。
得意分野は、節税、事業承継、組織再編、資金調達。
好きな食べ物は唐揚げ。
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価値を提供するために、あえて、やらない
「多くの顧問先を獲得するためには、何でもやらなければならないと考える方が多いかもしれません。しかし私は、開業から今まで『何でもやります』という姿勢で営業をしたことはありません」
意外なお話から始まる西山さんの営業スタイル。ではここからどうやって顧問先獲得にいたるのでしょう。
「私は何でもやらない代わりに、何ができて、どのような顧問先であれば力が発揮できるのかを明確に示します。例えば個人の確定申告は受けていませんし、ご紹介いただく際も、年商1億円以上の企業のみを紹介してくださいとお伝えしています。得意な分野も、事業承継やM&A、IPOなどをあげるようにしています」
強気に感じる方もいるかもしれませんが、何ができるかを明確にすることで相手に選ばれやすく、思い出してもらいやすい存在になっているといいます。
「よく、何でもやりますとおっしゃる税理士さんがいらっしゃいますが、それでは顧問先が増えても、結局ご自身の強みが発揮できない仕事が増えることになります。ターゲットを狭めることを恐れる方もいらっしゃると思いますが、私はあえて狭めることで、自分にあった顧問先との関係づくりができていると思います」
もちろん自分の強みやターゲットを絞っただけで、西山さんは満足しているわけではありません。同時にフットワークを軽くすることで、多くのチャンスの芽を見つけています。
「コロナ禍で機会は減りましたが、普段から積極的に人に会うようにしています。それと同時に、いろんな方に『お仕事を紹介してください』と言うようにしています。税理士の方の多くが、『紹介をお願いすること』が出来ていません。自分はその点を意識して行動しているので、結果が出せているのだと考えています。」
西山さんの営業力はすさまじく、例えば飲食店や交流会などで近くにいた方が経営者かなと思ったら、名刺を持って声を掛けにいくといいます。
「残念ながら偶然知り合った方から直接契約に結びついた事はまだありません。でも、後日お知り合いをご紹介いただいて仕事に繋がる事はよくあります。飛び込み営業に対して、苦手意識を持つ税理士の方は多いものです。だからこそ、私のような存在が顧問先を獲得できているんだと思います」
偶然居合わせた人に声をかけるのはハードルが高いものです。しかし、直接的に仕事に繋げることを意識しすぎず、純粋に人との繋がりを大切に増やしていくことなら、ハードルも低いのではないでしょうか。
常に相手にとっての最善策を考え続ける
西山さんの営業スタイルを“ガツガツしている”と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、顧問先候補となる企業とのやり取りでは、自分を過剰に売り込むことはないと言います。
「意外に思われるかもしれませんが、ご紹介いただいて面談した際、他の税理士さんや知り合いの士業の方を紹介することも多いんです。私の中では、お客様を増やしたいという気持ちはもちろんあるのですが、根底に人と人との繋がりを大事にしていくことで、縁は巡るという考えがあります。そのため、無理に自分を売り込んだり、相手に合わせたりする事はしません。不思議なもので、その人に最適だと思う対応をしていると、場合によっては『そう言わず西山さんと』と、風向きが変わって仕事が決まることもあるんです」
もちろんこの話は、小手先のテクニックではなく、心から相手にとって最適な価値を提供したい、という真摯な想いがあるから実現することです。
「営業=ガツガツ自分を売り込む」という発想になりがちですが、営業の本質は相手の悩みに寄り添い、答えを一緒に考え、そして提案することなのでしょう。
1年で80社達成という成果には、一見するとガツガツ営業していることが起因しているように見えますが、実は相手のことを真剣に考えるという、西山さんの姿勢こそが一番の要因なのかもしれません。
「こうです!」と言い切る勇気を持つ
最後に、こういった関係性を築きながら顧問先となった企業に対して、普段のコミュニケーションではどういった点に気をつけ、そして意識しているかについても教えていただきました。
「税理士という立場上、断定的な言い方を避けてしまう方は多いと思います。その気持ちは分かるのですが、私は最後まで御社の面倒を見ますという責任感の意味も含め、顧問先にはなるべく言い切ることを意識しています」
例えば、『こうなるかもしれないから、こうしたら良いんじゃないですか?』と提案する際には、西山さんであれば『このままだと、こうなりますから、こうしましょう』といった感じで、自分に見えている世界や解決策を言い切るそうです。
「これは独立する前から意識していたことで、逃げ道があると無意識に責任感や覚悟が薄まってしまうと思うんです。だから私は責任を全うして顧問先に寄り添うために、思ったことはきちんと伝えるし、言い切るようにしています。そして最後まで対応する覚悟を持って望んでいます」
まとめ
- 「なんでもやります」と言わず、自分の得意分野を明確に示すことで選ばれやすくなる
- 人と繋がるチャンスは積極的に作っていく
- 面談の際、顧問先にとって自分が最適な人材でなければ身を引くこともある
- 相手にとって本当の意味での貢献を考え、別の人材を紹介することもある
- 正しいと思ったことは、勇気を持って「こう思う」ではなく「こうです!」と言い切る
高い営業力だけでなく、強い責任感と顧問先に貢献するという覚悟が、結果として80社の顧問先開拓という数字に結びついていることがわかる西山さんのお話。
今回のお話は、独立されている税理士の方だけでなく、人との繋がりを大切にし、寄り添い、貢献していきたいと考える税理士の方に、参考になるお話ではないでしょうか。
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