5名から24名へ規模を拡大!事務所の運命を変えた決断とは
中小企業の業績アップに貢献する税理士さんには、それぞれ「いい税理士」を志すきっかけとなった原体験があります。今回は、兵庫県を拠点に活動する「みそら税理士法人」の髙橋保男さんにお話を伺いました。
節税や税金計算のサポートしかしていなかった事務所が、どのようにして中小企業の業績アップに貢献する事務所へと変わっていったのか。そして、なぜ5名から24名規模に事務所を成長させることができたのか。その経緯や理由についてお話しいただきました。
「いい税理士」に方針転換したからこそ、生き残ることができた
Q.髙橋さんの事務所について教えてください
私が所属するみそら税理士法人は、所長とその息子さん(公認会計士)、そしてパートナーである私の3人で経営しています。所長は現在71歳で、「君たちの好きなようにやりなさい」と言ってくれています。
今はパートの方も含めて24名の規模になりましたが、私が入所した頃は5名ほどの事務所でした。当時は、節税や税金計算などの税務顧問こそが、税理士や会計事務所の仕事だと考えていました。そのため、顧問先の経営に関わるという点では、雑談レベルの話をする程度でした。
それが今では、事務所として顧問先の業績アップのためにしっかり関与する方針に、がらりと変わっています。「いい税理士」を目指した、つまり、「税務顧問」から「経営顧問」に舵を切った。それこそが、事務所がここまで生き残り、今の規模まで成長できた要因だと思います。
Q.何をきっかけに経営顧問に舵を切られたのでしょうか?
今から15年ほど前に、所長が心筋梗塞で倒れました。そのこともあってか、2年連続で事務所の売上が下がってしまったんです。それまで、税務や会計の業務しかしていなったのですが、売上が減り続けたことで「このままでは淘汰される」という強い不安を心の底から感じました。いや、むしろ恐怖でしたね。極めつけは、顧問先の経営者から言われたあるひと言でした。
黒字にするためのアドバイスをするのが税理士じゃないのか!
2000年代初めの不景気だったころ、所長が顧問先の経営者に「世の中どこも不景気。しょうがないですね」と、ポロリとこぼしたことがありました。その一言に対して、経営者の方からものすごくお?りを受けたのです。
「税理士がしょうがないとか言うな。黒字にするためのアドバイスをするのが税理士の仕事じゃないのか!」と。
実は所長だけでなく、時を同じくして私自身も、別の顧問先に同じように叱られたことがあったんです。それが私たちのマインドを変える大きなきっかけになりました。「もっと顧問先の経営に、業績の向上に積極的に関わらなくては」と。
Q.そこから順調に経営顧問にシフトしていかれたのでしょうか?
いえ、そう簡単にはいきません(笑)。マインドは変わっても、実際にお客様と何を話せばいいのか、何をすれば顧問先の業績が向上するのか、すぐにはわかりませんでした。「売上が上がりましたね、下がりましたね」という話をしても、お客様は「それで?」としかなりません。
「これからは税務顧問ではなく経営顧問だ!」とマインドを変えた。けれど、マインドを変えても知識もツールも無いので、やり方がわからず何もできない。そんな状況でした。
何か始めなければと思い、まずはツールをあれこれと探しました。そこから、顧問先の経営上の目標数値をシミュレーションするシステムを提供している会社さんや、会計事務所向けのコンサルティングをやっている会社さんとの付き合いが始まりました。
積み上げたノウハウで、経営者から感謝される会計事務所に
コンサルティング会社さんに教わったことを事務所に持ち帰って、自分たちであれこれと試行錯誤しながらやってみる。前に進んだと思ったら後ろに下がったり、一進一退を繰り返しながらノウハウを培っていきました。
そんな中、所長の息子さんが東京から帰ってこられることになりました。彼は会計士として、主に再生系の仕事を多く手掛け、金融機関からの信頼も厚い。我々にはないノウハウとセンスを持ち帰ってきてくれたことで、事務所の成長に拍車がかかりました。
それでも、決してすべての顧問先に対して100点満点の成果をあげられるわけではありません。黒字を目指して関与したものの、損益トントンにしか持っていけないなんてことも当然あります。
ですが、「髙橋さんとは税金だけでなく経営の話ができる。経営判断するための数字も見えるようになった」と言っていただける。
「髙橋さんだからこそウチはトントンまで持ってくることができた、ありがとう」と言っていただける。これは、本当に嬉しいことです。
成長のために、経営者の「実現したいこと」を問い続ける
Q.顧問先の業績アップに貢献するために必要なことは何ですか?
Mikatus(ミカタス)さんの「いい税理士」の定義に即した言い方をすると、「経営者のやりたいことをヒアリングして理解するだけでなく、一緒に考える」ということになると思います。
経営者が会社や事業をどうしていきたいのか、お会いする度にお話を伺うようにしています。
>>Mikatus(ミカタス)が定義した「いい税理士」についてはこちら
目標数字や事業計画を社長と一緒に作って、それを追っていくモニタリングも大事ですし、壁打ち相手になって経営者の頭の中を整理して、不安や悩みを和らげてあげることも重要です。
しかし、最も大切なのは、やはり「経営者のやりたいことを一緒に考える」ことだと思います。経営者が「何を実現したいのか」を明確にしたり、忘れないように何度も問いかけたりすることが大事なのです。
常日頃から事務所のスタッフにも、この「『経営者のやりたいことを一緒に考える』という部分ができていないと、前に進めないよ」と伝えています。
20年以上のお付き合いがある調剤薬局の顧問先がいるのですが、当初は2店舗しかありませんでした。どんなときも、経営者のやりたいことを一緒に考える、ということを忘れずにお付き合いしてきたからこそ、10店舗、20店舗、そしては今では50店舗まで増やすことができたと思います。
お付き合いを始めた際に、経営者の方から「一緒に大きくなっていきましょう」と言われたことを覚えています。経営顧問に振り切ったからこそ、顧問先と一緒に成長することができた。そう思っています。
我々とお付き合いいただければ、必ずその会社の業績を上げてみせるという自信があります。その想いを持ち続け、これからも顧問先と一緒に成長していく会計事務所でありたいと思っています。
髙橋さんのインタビューを終えて【取材後記】
「このままでは淘汰されてしまう」という危機感から、事務所の方針を経営顧問へとシフトされた高橋さん。右も左もわからないような状態から、10年以上に渡って試行錯誤しながら、中小企業の業績アップに貢献する会計事務所を作り上げてきました。
その経験があるから「顧問先を絶対に黒字化させてやる」という強い自信と熱意を持って顧問先の経営に向き合うことができる。それこそが、事務所を24名規模にまで拡大させることができた要因であり、AIに取って代わられることのない税理士の価値なのではないでしょうか。
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