納得の1社に出会うために M&Aを成功に導く税理士向けサービスとは
株式会社M&Aサクシード 代表取締役社長 金蓮実さん
企業のM&Aに際して、顧問税理士が譲渡企業の経営者から相談を受けるのは珍しいことではありません。ただ、M&Aにおける「相手探し」、すなわち経営者が納得できる譲り受け企業を見つけるのは難しい面があります。
この相手探しをサポートしてくれるのが、株式会社M&Aサクシードが提供する「M&Aサクシードコンシェルジュ」というサービスです。この記事では、同社の代表取締役社長を務める金蓮実(キム・リョンシル)さんへのインタビューを通して、最近のM&Aにおけるトレンドや課題を確認します。
そのうえで、税理士向けに新たに立ち上げたM&Aサクシードコンシェルジュ マッチング代行サービスの内容について紹介します。
お話をうかがった方:株式会社M&Aサクシード 金蓮実さん
2003年、大学卒業後、株式会社リクルートに入社。2013年に株式会社リクルートライフスタイルの取締役に就任。採用事業の営業部長や新領域の事業部長を歴任。株式会社プラザクリエイト本社取締役を経て、2021年、Visionalグループに参画し、同年11月、株式会社M&Aサクシード 代表取締役社長に就任。座右の銘は「思考は現実化する」。ホームページはこちら
M&Aが増え続けている理由
Q.M&Aの件数は増加傾向にあるのでしょうか?
金社長(以下、金):はい、年々増えています。調査会社の株式会社レコフによると、M&A件数は右肩上がりで伸びており、昨年に関しては過去最多を記録しています。
Q.その背景には何があるのでしょうか?
金:よく聞くことだとは思いますが、やはり後継者不足が最も大きな理由の一つです。国の推計によると、2025年には日本企業全体の約3分の1にあたる127万社が後継者未定になるとされています。
またコロナ禍もM&Aの増加に影響していると言われています。例えば小売業がEC事業を立ち上げようとした場合、IT企業を買収することでOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインとの融合)を加速させる狙いがあります。実際、私たちが提供するプラットフォームでも、非IT企業によるIT企業のM&Aが増えているのを実感しています。
さらに言うと、コロナ禍や円安といった経営環境の変化の中で、多角化に乗り出す企業も増えています。先が見通せない状況の中で、本業一本でやっていくことに不安を感じる経営者は少なくないからだと思います。
人生を託せる出会いのために
Q.先ほど「私どもが提供するプラットフォーム」というご発言がありましたが、貴社のビジネスがどんなものなのか教えてください。
金:私たちは「人生を託せる出会いのために。」という言葉を大切にしながら、譲渡企業と譲り受け企業に出会いの場を提供する会社です。現在、約4,600件の譲渡企業と、8,000件を超える譲り受け企業が弊社のWebサイトに登録しており、出会いから成約までを一気通貫で行える仕組みになっています。
特徴としては、譲渡企業と譲り受け企業が直接やり取りする点が挙げられると思います。具体的には譲渡企業に対して、地域や業種を超えて多くの譲り受け企業から引き合いが届きます。言ってみれば"ラブレター"のようなものです。
譲渡企業は気になる会社だけに社名を明かし、従業員の雇用や譲渡額などの希望条件について話し合ったうえでトップ面談(トップ同士の面談)に進みます。そして実際に会って最終的に「ここだ」と納得した1社と成約します。
Q.貴社のビジネスモデルを教えてください。
金:譲り受け企業からは、成約したタイミングで規定の料金をいただいています。登録は無料ですが、弊社の審査を通った会社だけがサービスを利用できる形にしています。
この「審査」というものも弊社サービスの特徴の一つです。弊社のサービスは法人のお客様のみが利用でき、なおかつ、例えば反社会的組織が入り込まないように厳しい審査基準を設けています。
一般的なM&Aマッチングプラットフォームでは個人様にも開放しているケースが多いのですが、「このプラットフォームなら自社の情報を開示しても大丈夫だ」と譲渡企業に安心してもらえるように、弊社は審査制と法人限定にしているのです。
Q.日本では過去30年、M&Aに対してネガティブなイメージを持つ人も多かったと思います。
金:M&Aは経営の可能性を広げるものです。これが当たり前の選択肢になってほしい、という思いは今でも持ち続けています。M&Aに対してポジティブな見方が当たり前になれば、日本の市場はもっと活性化すると思います。
税理士がM&Aを支援するメリット
Q.貴社のサービスは税理士も利用できるのでしょうか?
金:2022年8月より、税理士先生にもご利用いただけるようになりました。
譲渡企業がM&Aをしようかなと思った時に、経営者が最初に相談するのは顧問税理士先生です。どの調査結果を見ても税理士先生が相談相手の第1位になっているのです。経営者が大きな経営判断をする時、ずっとそばにいてくれた税理士先生が相談相手として真っ先に思い浮かぶのでしょう。
にもかかわらず、「自分たちはM&Aの専門家ではないので、残念ですがお手伝いできません」と おっしゃる税理士先生は少なくないと聞きます。その裏では、本当は税理士事務所のメニューの一つとして「M&Aのサポート」を掲げられるようになったらいいのにな、と思っておられる税理士先生もたくさんいます。
ただ、M&Aをサポートするうえで難しい点があります。それは買い手探しです。買い手さえ見つかれば、トップ面談やDD(デューデリジェンス)、財務情報のやり取りなど、それ以降のフェーズは支援できるのに、買い手探しがとにかく難しいと多くの税理士先生は思っているようです。
こうした声に応えるため、2022年8月より始めたのが「M&Aサクシードコンシェルジュ マッチング代行サービス」という税理士向けのサービスです。ベータ版のサービスはこの春からすでにスタートしており、確かな手応えを掴んでいます。
納得の1社に出会えるサービス
Q.具体的にはどんなサービスなのでしょうか?
金:まずM&Aの希望を持つ譲渡企業から税理士先生が相談を受けます。税理士先生が受任すると、その税理士先生から買い手探しの部分だけを弊社が代行します。具体的には、譲渡企業が税理士先生に委託した後、私どもがその譲渡企業をご紹介いただくのです。
そして弊社のプラットフォームを使って譲り受け企業を探し、トップ面談を設定したところでオーナーシップを譲渡企業にお戻しする、という流れになります。
出典 株式会社M&Aサクシード
弊社のプラットフォームの特徴をもう一つ挙げるとしたら、スピード感です。早い場合は1ヶ月以内にトップ面談に進むケースもあります。
また譲渡企業はご自身の魅力に気づいていないことが少なくありません。弊社のコンシェルジュが、その魅力を一つ一つ引き出していきます。その中で、譲渡企業がM&Aにおいて大切にしたいこともあわせて伺います。
従業員をどうしたいとか、自社のブランド名は引き継いでもらいたいとか、そうしたことをヒアリングしていくのです。
Q.最後に、税理士業界にメッセージがあればお願いします。
金:このサービスを立ち上げるに当たり、たくさんの税理士先生と面談をしました。税理士先生の多くは、自分の顧問先が幸せになれるM&Aをしてほしいと真剣に考えています。そのことは、「人生を託せる出会いのために。」という私たちの経営理念と共鳴するものを感じます。
顧問先の経営者がM&Aを行うと意思決定した際には、私どもにぜひお声がけいただき、「納得の1社」に出会うことを一緒に実現していくパートナーになりたいと思っています。
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技術や販売網といったアドバンテージを持っているにもかかわらず、後継者がいないためにそれらを次世代に承継できないのは残念なことです。
多くの経営者を含む団塊の世代が70代を迎えようとしている今、税理士にとっても事業承継は待ったなしの問題と言えるでしょう。
税理士にとって特に課題とされる「相手探し」のフェーズをプロに任せることは、有力な選択肢と言えそうです。
取材協力 株式会社M&Aサクシード
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