自分の給与は自分で稼ぐ 新卒を2年で一人前にする税理士事務所の人材育成制度
税理士事務所を開業した代表税理士が、事務所を拡大させる過程でぶつかる壁が、スタッフの採用と育成です。ここでは人材育成にフォーカスを当て、140名を超える社員を擁し、独自のノウハウを蓄積しているNBCグループの野呂泰史さん(代表税理士)に、同グループの研修制度について話を伺います。
たった一つの失敗が命取りになる税理士の世界
挑戦する人は時には失敗することもある、失敗を恐れずにトライしよう――。一般論としてそう語られることもあるチャレンジ精神ですが、こと税理士に限っては事情が違うようです。NBCグループの代表税理士を務める野呂泰史さんは、次のように話します。
NBC税理士法人やNBCコンサルタンツ、NBC司法書士事務所などを合わせて140名以上の社員を抱えるNBCグループ。野呂泰史さんは創業者である実父の敏彦さんのあとを継いだ二代目経営者です。
コンサルティングファームのNBCコンサルタンツを傘下に置くこともあり、同グループの税理士には経営に関する相談が数多く寄せられるそうです。顧問先との契約形態によってさまざまなケースがありますが、そうした経営の相談について税理士は、時にはNBCコンサルタンツの経営コンサルタントと連携して、時には単独で事に当たります。
中でも野呂さんの記憶に深く残っているのは、ある女性社長が手がけるスクールビジネスを展開する会社の案件です。
育成と評価の指針は「自分の稼ぎに応じた収入を得る」
NBCグループでは次の三種類の研修を実施して、スタッフが日頃からスキルアップするための土壌を作っています。
①新人向けの研修
グループ傘下の各会社に対する理解や、理念や思想の継承に主軸を置く研修。税務監査や財務分析、相続など、基本的な内容やグループ独自のやり方についてプレゼンテーションを通して学びます。
②社員税理士向けの研修
サービス品質の向上を目的とする研修。全国の拠点における税務調査案件や、決算チェックで気になった点や気をつけなければいけないポイントなどを共有します。
③全スタッフ向けの研修
毎月、各拠点が持ち回りで担当するオンライン研修。事業承継税制やM&Aの事例、経理の業務改善の事例など、グループ全社での周知に値すると判断した情報や、実際に顧問先に提供したサービスなどの情報を共有します。
自分の給与分を稼ぐことが一人前の条件
こうした研修や実務でのOJTを通してスキルを磨いたスタッフは、どのくらいの時間をかけて一人前に育っていくのでしょうか?この点について野呂さんは、次のように話します。
NBC税理士法人を含むすべてのグループ会社で、自分の稼ぎに連動して収入が決まる形を取り入れているNBCグループ。スタッフ一人が担当する顧問先の件数を基準に給与を決める税理士事務所もある中で、同社では「稼ぎ、すなわち顧問料に応じた収入を得る」という明確な指針を打ち出すことで、公平感のある給与制度を実現しています。
税理士にも求められるコンサルティングスキル
「縁のあった会社は必ず成功に導く」ことをスローガンとして成長を続けるNBCグループ。新卒者や業界未経験者も入ってくる同グループでは、初期教育をはじめとする手厚い研修制度を用意しています。また、ベテラン税理士も税制改正や最新の事例など、情報を常にアップデートする必要があり、グループをあげて取り組んでいると野呂さんは言います。
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「経営者が本音で相談できるのは従業員や金融機関ではなく税理士であり、自分を頼ってくれる経営者を助けたい、その会社を良くしたいと本気で思うメンバーがNBCには集まってきます」と野呂さんは語ります。また、そういうマインドが強い税理士ほど、成長のスピードは速いとも言います。
1986年、北海道札幌市でスタートした小さな税理士事務所が140名を超える社員を抱えるまでに成長した背景には、開業当初から改善を繰り返してきた独自の研修制度と、「税理士は経営者にとって唯一のパートナー」だと信じる野呂さんたちの強い想いがあるようです。
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