経営者の人生に向き合うことが「いい税理士」の使命
中小企業の経営者が必要としているのは、決算書のような過去の数字ではなく、未来の数字の話です。とくに資金繰り、つまりキャッシュ(現金)こそが最大の関心事なのです。
これまで会計事務所のメインの仕事であった税金計算や節税相談だけでなく、顧問先の資金繰りまで面倒を見ることができれば、他の事務所との差別化につながります。
Mikatus(ミカタス)が提供する中小企業の財務カルテ「キャッシュ・イズ・キング」を活用することで、顧問先の資金繰りを支援することができる。それが大阪で開催した「いい税理士」座談会での1つの結論でした。
では、みなさんはどのような顧問先に対して資金繰りに関するサービスを提供しているのでしょうか。
経営者が夢を語ってくれるようになる
なぜ「キャッシュ・イズ・キング」は事務所の差別化に有効なのか。それは、経営者に対して「このまま行くと危ない!」という気づきを与えられるから。それが座談会でのお話でした。
その理由の一つが、ボタン一つで顧問先の未来のキャッシュ予測を表示できる点にあります。「キャッシュ・イズ・キング」は、2年分の会計データさえあれば、ボタンをクリックするだけで、1年先の資金予測を見通すことができるのです。
経営者の注意は、まず画面右上の数字に向かうといいます。「このままいくと、1年後にはキャッシュがこうなる可能性があります」という話から切り出すことで、経営者を引きつけることができます。
そこから、経営者の最大の関心事である将来のキャッシュについて、議論が発展していきます。これまで税務に関するサービスしか提供できなかった顧問先に対しても、新しい価値を感じてもらえるといいます。
資金繰りに困っていたり、もっと稼ぎたいと思っている顧問先に刺さる!
では、「いい税理士」を志すみなさんは「キャッシュ・イズ・キング」を活用して、どのような顧問先に対して価値を届けているのでしょうか。
当然のことながら、資金繰りに困っている顧問先や、お金に興味がある経営者が一番のターゲットになるようです。
また、たとえ資金繰りに関心が高くない顧問先であっても、「キャッシュ・イズ・キング」を使うことで資金の大切さに気づかせることができると言います。たとえば、工事を請け負う建設業などの場合には、仕入のために大きな支出が発生してしまうケースがあります。
「キャッシュ・イズ・キング」を活用して、そのような大きな支出が発生した場合をシミュレーションすることで、事前に資金繰り対策を検討することもできるといいます。
差別化への一歩は、まずは案内してみること
「キャッシュ・イズ・キング」に高い興味を示す経営者がいる一方で、なかなか興味を持ってくれない経営者もいます。
Excelなどの表計算ソフトに強く、資金繰りを自分で管理できている経営者や、不動産業のように収入が安定しており、将来が読みやすい業種の顧問先には興味を持ってもらえないこともあるそうです。
しかし、「そのような顧問先には案内しないでおこう」と最初から諦めてしまうのは、事務所の差別化を目指すうえでは得策ではありません。
最初は興味を持ってもらえなかったとしても、「この税理士にはおカネの相談ができるんだ」と経営者の記憶には残るかもしれません。実際に資金繰りに困ることがあった際に、「いい税理士」のことを思い出してくれる可能性があります。
また、会計事務所として新しいサービスの提供に取り組んでいる、という姿を見せることも重要です。「経営者として他の事務所と違う取組みをしている」ということを認識してもらえれば、同じ経営者として、その姿勢に共感してもらえるのではないでしょうか。無下に断られることを怖れずに、まずは案内してみることが重要です。
グラフには経営者の人生が詰まっている
「キャッシュ・イズ・キング」の価値は、ボタン1つで表示されるグラフだけではありません。そこから「補正」という操作を行うことで、経営者の頭の中にある、将来の売上や支出の見通しをグラフに反映させていきます。経営者とコミュニケーションを取りながら、将来の予測をより精緻にしていくことが大切です。
経営者と会社の将来についてしっかりと議論するためにも、訪問前の事前準備が欠かせません。座談会に参加されたみなさんは、1顧問先あたり、最長約30分ほどの時間をかけて準備しているようです。
どのようなグラフが表示されるのかは、必ず事前に確認します。そのうえで、経営者が興味を持ちそうなポイントについて、なぜそのような数字になるかを過去の会計データを参照しながら下調べしておきます。最初に表示されるグラフは、あくまで過去の数字に基づく予測のため、明らかに違和感のある数字はあらかじめ補正をして経営者に見せることもあるそうです。
この事前準備をする上で注意しておくべきことは、グラフは単なる数字の積み上げではない、ということです。
経営者を救いたい、経営者の役に立ちたい、という想いが無ければ、事前準備もただの数字遊びになってしまいます。「いい税理士」を志すならば、何のために「キャッシュ・イズ・キング」を使っているのか、その目的を忘れてはいけないということです。
経営者と向き合うことが「いい税理士」の仕事
「キャッシュ・イズ・キング」はどのような顧問先にニーズがあり、どのような準備が必要なのか、少しでも伝わればと思います。
しかし、「キャッシュ・イズ・キング」をはじめとするITツールはあくまでも手段です。大切なのは、中小企業の経営を支えるという目的と、経営者を救いたいという税理士の想いである。それが座談会を通しての結論です。
数字の集計作業などはシステムや機械にも任せることができても、経営者の想いに寄り添うことは、「いい税理士」にしかできません。
「いい税理士」が向き合うべきなのは、書類や数字の山ではなく、経営者の想い、そして人生です。税理士のみなさまのご活躍によって、多くの中小企業の経営者が救われることを願っています。
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