税理士事務所差別化のカギ 熊本の雄が「事業承継支援」と「経営支援」の二本柱に行き着いた理由

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株式会社C&A
代表 髙濵亮さん

事業承継サポートと経営サポートを強みとして、熊本県で確固たる地位を築いている税理士事務所があります。髙濵亮さんが代表を務める株式会社C&Aです。中小企業経営者のホームドクターとして活躍する髙濵さんに、二本柱のサービスに行き着いた経緯と、それぞれに込めた想いを伺います。

自身の失敗を糧に生まれた事業承継サポート

事業承継サポートと経営サポートに圧倒的な強みを持つ株式会社C&A。同社が事業承継を支援するようになったのは、二代目の所長として事務所を継いだ髙濵亮さん自身が、事業承継に苦労した経験を持つことが大きく関係しています。

一般に事業承継と言うと株式の譲渡などが問題になりがちですが、髙濵さんの場合は「人の問題」が大きかったと言います。

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先代の所長の頃からいる社員は私より10歳も年上で、その人たちの信頼をどうやって勝ち取るか、という点で苦労しました。例えば会議の生産性を上げようとか、朝礼を効率的にやろうとか、事務所の方向性を変えていこうと思った時に、協力がまったく得られない状況だったんです。孤独感にさいなまれた私は、いっそ事務所を辞めてしまおうかとさえ思ったほどです。そんな時、あるセミナーに出会い視野が開けたんです。

セミナーでは、後継者経営や事業承継についてさまざまなことを学びましたが、「自分自身の事業承継に対する考え方がまるっきり間違っていたと知ったことが大きかった」と髙濵さんは振り返ります。

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セミナーで学んだ事業承継の本質的な考え方と、当時の自分の考え方が真逆を向いていることに気づきました。考え方を間違うと行動を間違い、行動を間違うと結果が出ません。自分がなぜ上手くいかないのか、その理由が明確になったことで行動を軌道修正できるようになったんです。

自分の考え方と行動の誤りを認めた頃から、社歴の長い社員からの協力が得られるようになり、髙濵さんは後継者として事務所の拡大に乗り出します。

そして周りを見渡してみると、当時の自分と同じように事業承継に苦労している中小企業経営者がたくさんいることに気づき、何とかして彼らを救いたいという想いから、事業承継サポートをサービス化したのです。

具体的には、セミナーで共に学んだ仲間たちと「後継者の学校」というセミナー事業を始め、現在では東京校、静岡校、大阪校、九州校の4校にまで規模を拡大させています。

例えば、事業承継に対して受け身だった人が「後継者の学校」で後継者に必要な"心技体"を学んだところ、向き合い方が180度変わったという事例があります。

具体的には、①起業する、②公務員になる、③別の会社でサラリーマンになる、など他の生き方について真剣に考えてもらい、そのうえで他の選択肢ではなく事業を承継する道を選ぶことを改めて決意してもらいます。この過程を経ることで、すべての物事を自分の責任で進めていくんだ、という後継者としての覚悟が生まれるのです。

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覚悟を持った後継者は受け身ではなく、自ら積極的に事業承継に向き合うようになります。心技体はどれが欠けてもダメ。例えば「技」、すなわち財務やビジネスモデルなどに関する「知識」だけを増やしても、上手くいくものではありません。

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先代から引き継いだ資産をより強化した経営サポート

一方、経営サポートについては先代の所長の時代に始めたもので、髙濵さんが事業承継してからより本格的にサービス化するようになったそうです。

先代の所長の時代は、事務所の主要な業務は税金対策でした。しかし経営者の話を聞いていくうちに先代は、中小企業が求めているのは節税よりも黒字化や経営を良くするための支援だという結論に達します。髙濵さんはその方針を踏襲する形でサービスをより強化することにしたのです。

髙濵さんが手掛けた中でこんな事例があります。

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紹介でうちに来られた小売業の社長さんがいます。持参した決算書を見ると黒字なのですが、資金が回らないと悩んでいました。銀行からも「これ以上は貸せません」と言われ、どうしていいかわからないと途方に暮れていたんです。

実態をよく見てみると、決算書上は黒字なのですが、経費の調整や、不良化した在庫の処理をしていないことがわかりました。結果、実際は1,000万円の赤字という状態でした。銀行の評価を気にして当時の税理士さんはそのような処理をしていたようですが、社長もそのことを理解していなかったんです。

本当は赤字なのに、社長は黒字であるという認識なので、改善に向けた取り組みを行っていなかったんです。ただ実際には赤字なので、目先の資金繰りはどんどん厳しくなるという現実があり、加えて代表者貸付も徐々に増えていきました。この社長には「実態は赤字ですよ」とお伝えしたうえで、一緒に現状把握に取り組んだんです。

店舗ごとの採算や商品ごとの利益率などを分析してみると、赤字店舗や採算の合わない商品が見えてきたと言います。そのことを社長に気づいてもらうことが大事なんです、と髙濵さんは強調します。

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傷があって今、出血していることがわかれば、社長は経営者としての行動を取ります。あとはそれを数値に落とし込んで不採算店舗から撤退し、商品を絞り込むことです。並行して、大量仕入れによる値引き交渉などもします。

こうした施策を打つと数値がこう変わりますよ、というシミュレーションを行い、実行し、一緒にモニタリングしてアクションプランを練っていくことを毎月、繰り返しました。その結果、2年で1,000万円の黒字に転換したんです。

髙濵さんが行ったことは至ってシンプルです。社長に現状をしっかり見せて赤字の要因をつぶす、そのためにいつまでに何をやるかを決める、ということを徹底したのです。

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その社長は経営者としての力がなかったわけではなく、ただ現状がわからなかったので手を打てなかったのです。そういうきっかけを作るのが税理士の役目なんだと思います。

九州の中小企業のホームドクターとして

髙濵さんが代表を務める株式会社C&Aの社名は、スペイン語のConsultresとAsociadosを組み合わせたものです。Consultresは「診察する、相談する」、Asociadosは「協力、仲間」という意味です。つまりこの社名には「企業の発展につながる支援を社内外のパートナーと協力して行う仲間たち」という意味が込められているのです。そしてC&Aのスタッフの活動は、「私たちは中小企業経営者のホームドクターとして、社員同士、お客様、地域社会との共生(ともいき)を実践します」という企業理念に集約されます。

経営サポートにおいて社長に気づきを与えたように、あるいは事業承継サポートにおいて後継者に必要な心技体を伝授したように、中小企業経営者にとってのホームドクターのような存在になることを髙濵さんたちは目指しています。

また「共生(ともいき)」という聞き慣れない言葉は、過去から未来に向かって共に生きていくという浄土宗の概念から取ったものです。そこには「同じ時代を生きる者同士だけでなく、過去の人から引き継いだバトンを未来の人へ渡す」という時間の流れを包含した強い想いが込められているのです。

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中小企業の経営者には、例えば新しい保険に入るだとか、新しい設備投資を検討するだとか、新規事業を立ち上げるだとか、新しい自動車に買い替えるだとか、色々な関心事が出てきます。それらを真っ先に相談できる、まさにホームドクターとして頼られる存在になりたい。それが我々の願いです。

*     *     *

中小企業は時として嵐に立ち向かわなくてはならないことがあります。その際、羅針盤になれるのが税理士事務所だと髙濵さんは言います。

AIに取って代わられる衰退産業と指摘されて久しい税理士業界ですが、髙濵さんは逆に、今がチャンスだと捉えています。社長の頭の中を数値化して未来をシミュレーションでき、なおかつ適切な方法で情報提供ができる税理士は、必ず必要とされるという確信があるのです。

税務プラスα。その「プラスα」の部分をどう磨いていくか。そのことに真剣に取り組んでいる人こそが、髙濵さんの考える「いい税理士」なのかもしれません。

取材協力 株式会社C&A

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