税理士が独立前に見直すべき、年収を左右するマーケティングの大原則

近年、税理士事務所の二極化が大きく進んでいると言われています。
「開業さえすれば、後はなんとかできる」このような楽観的な見立てはもはや通用しない、そう考える税理士の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし厳しい環境においても、独立開業後に顧問先を着実に開拓し、大きく成長を遂げる税理士事務所は存在します。開業して成功する税理士とうまく立ち行かない税理士、一体どこに違いがあるのでしょうか。
この記事では、そのような疑問を抱えた税理士の方へ向けて、年収を左右するマーケティングの大原則と題しお届けします。

税理士にとってマーケティングは最高の武器

一般企業にとってマーケティングとは、多くの場合、販売促進活動や営業活動のことを意味します。では、税理士という職業においては、マーケティングとはどのようなことを指すのでしょうか。

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。

引用元:日本マーケティング協会 1990年

「顧客との相互理解」とは、顧問先にどのような価値を提供するかいうこと。その結果は、顧問料や年収という数字として現れます。「公正な競争」や「市場創造」とは、平たく言えば仕組み作りです。つまり、税理士にとってマーケティングとは、顧問先にどのような価値を提供していくかの仕組みづくりのこと。その仕組みがうまくつくれるかどうかが、顧問料や年収を左右するのです。

マーケティングの仕組みづくりで押さえておきたい4つの戦略

では、いったい何をすれば良いのでしょうか。そのヒントはマーケティングの大原則である4つの戦略にあります。順にご紹介いたします。

1:商品戦略(どんな価値を提供するか)
税理士にとっての商品戦略は、税理士自身に大きく関係します。他の税理士と差別化できる自分の特徴や強みはどこか、少し考えてみましょう。

例えばある税理士さんには、起業家を応援したいという強い気持ちがありました。差別化を意識し、起業家支援の付加価値と料金体系の仕組みをつくったところ、その戦略は功を奏し、起業家との顧問契約を増やすことができました。これは差別化を起点にした、仕組みづくりの成功例です。

2:価格戦略(提供価値に見合った顧問料)
開業税理士の多くは、顧問料の値下げに抵抗感を持っています。一度下げてしまった顧問料を再び上げることは非常に難しいため、このように考えるのはむしろ当然と言えるでしょう。

価格戦略を考える際、助けになるのは「税理士業はサービス業である」という捉え方です。宿泊業や飲食サービス業においては、高い価格から安い価格まで、それぞれ提供される価値に基づいて様々な価格が設定されますが、税理士の顧問料も例外ではありません。

価格が高いか安いかは、提供される価値とセットで考えるのがマーケティングの原則。
「なんとなく値下げを要求されたから…」といった安易な理由で顧問料を妥協してはなりません。顧問料こそ、提供する価値という側面から価格戦略を見直さなければならないのです。

自計化推進から、マーケティング戦略のヒントを探る

商品戦略とは強みを明らかにすること、価格戦略とは顧問料の明確な方針を定めること。この2つの戦略に、これからご紹介するチャネル戦略、プロモーション戦略を合わせた合計4つのマーケティング戦略を、組み合わせて考えることが重要なポイントです。

3:チャネル戦略(顧客接点)
一般企業の場合、チャネル戦略には直接販売か代理販売かといったことも含まれます。税理士事務所の場合は、顧問先の開拓をホームページや広告を使ってするのか、それとも紹介をメインにするのか、この辺りをチャネル戦略として考えなければなりません。

例えば、顧問契約に付加価値をつけ高い価格を設定したとします。この場合、ホームページでの直接開拓は得策とは言えません。なぜなら、ホームページに高い価格を掲載することは不利に働くからです。このような場合は、紹介をメインにします。たとえ価格が高くても、提供価値に見合うことを紹介者が証明してくれるため、顧問契約につながりやすいのです。

チャネル戦略とは、開拓する顧問先との接点をどのように持つかということ。そのため、商品戦略(どんな価値を提供するか)や価格戦略(提供価値に見合った顧問料)も関わってくるのです。

4:プロモーション戦略(PR)
プロモーション戦略というと、テレビCMや新聞広告を思い浮かべる方も多いでしょう。もちろんそれらも含まれますが、より本質的な意味でのプロモーション戦略とは「顧客とのコミュニケーション」のことです。

税理士事務所の多くは、顧問先に対し自計化を推進しています。自計化を実現するためには、経理事務を行うメリットを顧問先に訴求するコミュニケーションが欠かせないもの。こう捉えると、自計化推進も立派なプロモーション戦略のひとつです。従って、自計化推進からマーケティング戦略のヒントを探っていくもの有効な手立てと言えるでしょう。

成功の分かれ目は、マーケティング戦略の継続的な見直し

この4つの戦略は「マーケティングミックスの4P」と言われるマーケティングの大原則です。4つの戦略を打ち手として組み合わせることで、マーケティング戦略を具現化させることができます。

二極化が進む税理士業界にあって、成功の分かれ目はマーケティング戦略にあるといっても過言ではありません。商品戦略、価格戦略、チャネル戦略、プロモーション戦略、これら4つの戦略をよく考え、継続的に見直していきましょう。

税理士の武器になるマーケティングには、4つの戦略のほかに、「SWOT(スウォット)分析」があります。とてもシンプルで使いやすい考え方なので、みなさんのマーケティング戦略をまた一歩前進させてくれるはずです。

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