年間70件の顧問先獲得に成功 大阪の税理士事務所がコロナ禍でも急拡大できた理由

あさひ税理士事務所 代表税理士 森田賀文さん
昨年1年間で約70件の顧問先獲得に成功した事務所が大阪府にあります。JR大阪駅や阪急梅田駅から徒歩3分の好立地に事務所を構える、あさひ会計事務所です。
スタッフ14人の中堅事務所が躍進できた理由はいったい何なのでしょうか?代表税理士として勤務する森田賀文さんに、その秘訣について伺いました。
お話をうかがった方:あさひ税理士事務所 代表税理士 森田賀文さん
大阪府箕面市生まれ。関西大学を卒業後、株式会社トーカイにて営業を10年経験。あさひ会計事務所に入社後は売上の増加とスタッフの働きやすい環境づくりを中心に事業に従事。
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8人から14人規模へコロナ禍での急拡大
ここ数年、年間約30件ずつ顧問先数を伸ばし、売上も前年比120%ほどで推移してきた、あさひ会計事務所。コロナ禍が深刻化した2021年は、約70件の新規獲得に成功します。その要因として森田さんは「お客様ごとに柔軟に対応している」ことを挙げます。

一件一件の顧問先と真摯に向き合う姿勢が評価され、昨年、顧問先数を大きく伸ばしたあさひ会計事務所。顧問先とのやり取りは主にLINEで行い、「友達のように何でも言っていただける関係性を築けているのかもしれません」と森田さんは自己分析します。
顧問先数の増加に伴い事務所スタッフの数も増え、昨年初めには8人だったスタッフが年末には14人に到達。コロナ禍をよそに、事務所内は静寂を保ちながらも活気にあふれています。

顧問先同士のコラボレーションのハブとして
そんな森田さんには「事務所をこうしたい」という明確な目標があります。

私たちにはさまざまな業種のお客様がいらっしゃるので、お客様同士が交流を図り、お互いに利益となるような関係性になればいいと思っています。必ずしも、我々がその街の中心になる必要はありません。
実際に森田さんを介して顧問先同士がコラボレーションした事例もあります。例えばリピート客を増やしたいと考えていた飲食店と、飲食店向けの広告を得意とする広告会社との協業は「見ていて気持ち良い」ほどの効果を生みました。
発端は飲食店のオーナーが発したひと言です。
「森田先生、うちは一見さんが多いからリピーターがつくように客層を変えていきたいんですよ」
これを聞いた森田さんにはピンと来るものがありました。

このひと言から始まった社長同士のコラボレーションはすぐに効果を上げ、飲食店は売上を1割伸ばしただけでなく、リピート客の増加も実現。売上の安定化をもたらしました。

中小企業経営者の物事を動かす決断力や意思決定の早さには目を見張るものがあります。そのコラボレーションのハブとなった森田さんは「そんなことならお安い御用です」と快活に笑いますが、二人の社長からは「先生に顧問税理士をお願いして良かったです」と奇しくも同じセリフで感謝されたそうです。
こうした出会いを広げていくことで、森田さんの思い描く「街」はさまざまなチャンスに満ち溢れたものになるのかもしれません。

ITツールの活用により商圏の拡大に成功
2人の税理士を含む14人のスタッフが効果的に活動するために、事務所をあげてペーパーレス化などに取り組んでいると言う森田さん。LINEをはじめとするITツールの活用を進めているのも、あさひ会計事務所の特徴の一つです。

そのためにオンライン会議ソフトのZoomや、リモート接続ソフトのTeamViewerなど、ITツールを駆使しているのです。Zoomを導入したことで、沖縄県や宮城県など、遠隔地の顧問先が増えてきており、もともと標榜してきた「地域密着の事務所」における地域の範囲が広がったと言います。

顧問先の時間を創出して売上拡大に貢献する
そう語る森田さんの考える「良い税理士」とは、顧問先の時間を創出して売上拡大に貢献する税理士だそうです。

例えば最近では、10年前の家賃を支払うよう求められたお客様が私に相談され、弁護士さんと連携して対応に当たっています。あるいは、高校進学を控えたお子さんを持つお客様が、授業料無償化の対象になるのか訪ねられたこともあります。
お客様の人生に関わるいろいろな課題を解決するためのワンストップサービスを提供できることも重要だと思います。
こうした付加価値の高いサービスを事務所スタッフの一人一人が実践できるようになってほしい、と語る森田さん。そのためには仕組み作りが大切で、例えば事務作業は極力減らしてお客様の課題や悩みを事務所スタッフ間で共有し、解決策を提案できる体制作りを進めているそうです。

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あさひ会計事務所が昨年1年間で70件の顧問先獲得に成功した秘訣は、柔軟な対応とITツールの活用により遠隔地の顧問先を増やしていることにあるようです。
今年で48歳を迎える森田さんは後進の育成にも余念がありません。そこには、事務所のスタッフも森田さんが作る「街」の住人として、存分に活躍してもらいたいという願いが込められているのです。
森田さんを介して社長同士がつながったように、あさひ会計事務所のスタッフもコラボレーションのハブとして「街」の活性化に尽力してほしい――。そんな思いがあるのかもしれません。
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