【中小企業会長インタビュー】カリスマ経営者亡き後の会社を救った税理士の言葉 「社外CFOとして共に歩みます」

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株式会社ジャパンビジネスラボ
会長 杉村貴子さん

徹底した自己分析を通してキャリアデザインを支援する「我究館(がきゅうかん)」や、2ヶ月で英語および中国語のスキルを飛躍的に向上させる「プレゼンス」など、学生・社会人向けのスクール事業を手掛ける株式会社ジャパンビジネスラボ(以下、JBL)。

日本におけるコーチングスクールビジネスの草分け的な存在である同社は今、次なるステージへ踏み出そうとしています。創業者で夫でもある故・杉村太郎さんからバトンを受け取り、IPO(Initial Public Offering:新規株式公開)を目指す杉村貴子会長に話を伺います。

道半ばで倒れた夫の意志を受け継ぐ

Q.貴社の特徴を教えてください。

杉村貴子会長(以下、会長):弊社は1992年に杉村太郎が設立した日本初の就職・転職支援スクール「我究館」を中核とするスクール事業を手掛ける会社です。我究館は29年の歴史の中で8,500人の卒業生を輩出し、ほぼすべての業界でご活躍いただいています。2001年にスタートした英語および中国語のコーチングスクール「プレゼンス」も、日本で最初の語学コーチングスクールとして多くの方にご愛顧いただいています。今年は創設30周年のメモリアルイヤーでもあり、社員一同、IPOを目指して邁進しています。

Q.貴子会長が貴社に入社した経緯、社長や会長に就任した経緯について教えてください。

会長:私はもともと大和総研でマーケティングリサーチ担当のアナリストとして勤務していました。JBLの創業者であり、夫でもある杉村が癌で他界したのが2011年8月。彼が作った事業を何とか世に残したいと思い、死別したタイミングで監査役としてJBLにジョインしました。翌2012年に社外取締役になり、大和総研を辞めて2014年4月にJBLの代表取締役社長に就任。2020年にはM&Aを実施し、アドバンテッジパートナーズ様と協業することを機に会長職に就きました。

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赤字からのV字回復を支えた税理士のアドバイス

Q.貴社のこれまでの業績はどんな状況だったのでしょうか?

会長:「平成の松下村塾」を目指して創設した我究館とプレゼンスの受講生は年々増え続け、それに比例して業績も堅調に推移していました。ところが杉村が倒れた翌年、会社は赤字に転落します。私としてはその原因がわからずに右往左往したのですが、そんなある時、NBCグループの野呂敏彦社長(現相談役)の講演を拝聴する機会があったんです。NBCグループは、NBC税理士法人やNBCコンサルタンツなどを含むホールディングスです。

敏彦社長は講演でこんな話をされていました。

勤務税理士時代に担当していた当時の顧問先の経営者が、資金繰りに行き詰って首をくくってしまったそうなんです。その時に敏彦社長は、税理士の仕事は事後の金勘定だけなのだろうかと自問され、悲鳴を上げている経営者を助けたいと決心。独立して現在のNBCグループを設立されました。「私が担当する会社は絶対に倒産させない、少しでも危険な兆候が見られたら必ずアドバイスをする、あんなに悲しい想い、悔しい想いは二度としない」という敏彦社長の力強い言葉を聞いた時、私は身体の芯を貫き通すものを感じました。そういう経緯で弊社はNBCコンサルタンツ、およびグループ会社であるNBC税理士法人と顧問契約を結ぶことにしたんです。

Q.貴子会長が社長に就任した2014年、JBLは黒字化に成功したと伺いました。

会長:NBCグループの力添えのおかげだと思っています。税理士として弊社を担当してくださったのは、敏彦社長のご子息の野呂泰史先生(現社長)です。誠心誠意、支えていただいた泰史先生のおかげで、今の弊社があると言っても過言ではありません。

具体的には、泰史先生は過去5年分の財務分析に必要なあらゆる会計データを提出するよう求められました。社内に残っていたほぼすべてのデータです。これをもとにさまざまな角度からアドバイスをくださったんです。

例えば当時、業績の悪かった大阪校を立て直す施策などは非常に示唆に富むものだったと記憶しています。一方では蛇口を閉めて止血しながら、もう一方では別の蛇口をゆるめて売上を伸ばしていく。ご提案いただいた具体的な施策は、目からウロコの落ちるものばかりでした。

「貴子さんが社長に就いた年に何としても黒字化させる」。このことを合言葉として支えていただいた泰史先生には、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。おかげさまで私が社長になった年に黒字に転換し、翌年には最高益を出すことができました。

>>>NBCグループの人材育成方法についてはこちら

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レッドオーシャンを泳ぎ切るための苦渋の決断

Q.顧問税理士は今でもNBCグループなのですか?

会長:いえ、NBCグループとは円満のうちに顧問契約を満了させていただき、今は新たな税理士法人にお世話になっています。というのも、学生および社会人向けのコーチングスクールビジネスは、この数年で新規参入者が増え、市場がレッドオーシャンになっています。中には、弊社の講師陣を引き抜いてまで参入してくる会社もあるほどで、パイの奪い合いが激化しているのです。仮に私の代までは存続できても、次の世代で淘汰されてしまっては意味がありません。

この状況を生き抜くために、弊社は新たなフェーズに入ったと考えています。冒頭で申し上げたとおり、2020年にアドバンテッジパートナーズ様が設立したパスメイクホールディングスにグループインし、より強固な体制のもとでビジネスを展開していく決断をしました。パスメイクホールディングスがIPOを目指すのに伴い、弊社の税理士法人もIPOに特化したところに変更する必要が出てきたのです。

社外CFOとして各種の仕組化や人事評価制度の整備などにもご尽力いただいたNBCグループには感謝の言葉しかありません。ありがたいことに、泰史先生をはじめとするNBCグループの方々も弊社の意向にご理解を示され、次なる挑戦に向け優しく背中を押してくださいました。

今回のインタビューをお引き受けしたのは、泰史先生をはじめとするNBCグループの皆さまに感謝の意を改めてお伝えしたかったからです。私は経営者ですから、会社を存続させるために、時にはシビアな決断をしなければなりません。ただ、社長就任一年目に黒転を果たし、翌年には最高益を出せたことについては、今でも泰史先生をはじめとするNBCグループの方々に心から感謝しています。それがなかったら今の弊社は存在していないと思います。

Q.貴子会長にとって「良い税理士」とはどんな方でしょうか?

会長:業績向上に貢献し、なおかつ経営者の良き理解者となってくださる方が、良い税理士だと思います。経営者は大きな責任を抱える一方で、深い相談ができるパートナーのいる方は少ないのではないでしょうか?

その意味でも、経営者のミッションやビジョンや夢、それらに伴う課題や悩みについて日頃からよく理解してくださることが必須になると思います。そのうえで数字面からサポートすることで業績向上に貢献する方こそ、理想的な税理士です。

そんな先生がバックアップしてくだされば、経営者は安心してビジョンを描けると思います。そうした面からも、泰史先生をはじめとするNBCグループの先生方に私は心から感謝しています。

Q.今後の目標を教えてください。

貴子:我究館とプレゼンスを日本一、いえ世界一のコーチングスクールに押し上げることが目標です。両スクールをあわせ、これまでに約3万4,000人を越える卒業生を輩出していますが、まだまだこれからが勝負だと思っています。

我究館とプレゼンスを通して、関わった方の人生を輝きに満ちたものにすることが私たちのミッションです。このミッションを果たすべく、今後も志を高く持ってビジネスに邁進していきたいと思います。

*     *     *

カリスマ経営者だった杉村太郎さんを失い、一時は赤字に転落したJBL。危機に陥った同社を救ったのは顧問税理士だったNBCグループの野呂泰史さんでした。泰史さんは事あるごとに「社外CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)として私を利用してください」と貴子会長を励まし、財務のプロフェッショナルとしての立場からさまざまな施策を実施。見事、最高益を出すまで同社をV字回復に導きます。

会社が新たなフェーズに入ったことで顧問契約は満了となりましたが、杉村さんは泰史さんに対して今でも感謝の気持ちを忘れていません。新たに迎え入れた顧問税理士と共にIPOを目指す杉村さん。コーチングスクール事業を手掛ける企業の草分けとしてのプライドを胸に、レッドオーシャンの荒波を乗り越えようとしています。

取材協力 株式会社ジャパンビジネスラボ

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