【中小企業社長インタビュー】26歳の税理士がクビを覚悟して伝えた一言

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株式会社ワカヤマは塗装・メッキ業を営む社員50名の企業です。社屋を構える福井県鯖江市の名産であるメガネなど、一点数万円を超える高級品も手掛ける優良企業は、二代目の代表取締役社長を務める若山健太郎さんへ事業承継を進めている真っ最中。現在の顧問税理士とは「経営方針をめぐって大ケンカをしたことがあります」と語る若山さんは、税理士に何を求めているのでしょうか?

経営方針をめぐり取っ組み合いのケンカ寸前の事態に

Q.貴社の特徴を教えてください。

若山:塗装とメッキの両方をやっている会社は意外と少ないので、その点が私たちの第一の強みだと思います。扱う商品はメガネやアクセサリーなど、一点数万円を超えるようなものも多く、弊社の技術力を信頼してくれるクライアント様から好評をいただいています。最近では色による差別化を図るために、美容はさみや水栓金具など、今までは銀色の製品が当たり前だった業界からも受注するなど、営業規模を拡大しています。

Q.業績が好調なんですね。

若山:おかげさまで今は好調です。私が二代目の社長に就く前は、実父が社長を務めていました。その頃は売上が3億円内外で横ばいに推移していまして、よく言えば安定している会社、悪く言えば成長しない会社だったんです。

2016年8月に父のあとを継いだ私は、しばらくして顧問税理士を今の先生に切り替えました。以前の先生は高齢で、携帯電話もEメールアドレスも持っていない方だったからです。私はクラウド型の会計サービスを導入したいと思っており、それに対応していただけるということで、当時26歳と若かった今の先生にお願いすることにしたんです。ただ、今でこそ良好な関係を築いていますが、実は私と今の顧問税理士は会社の経営方針をめぐり、取っ組み合い寸前の大ケンカをしたことがあります。

Q.何がケンカの原因だったんですか?

若山:父は会社の経営について「利益を出すと税金という"罰金"が科される」という考えの持ち主でした。社長に就いたばかりの私にとっては父が唯一の「先生」でしたので、私も父と同じ考えを持つようになっていたんです。ある時、社員にボーナスを支給しようとしたところ、先生から支給額を下げるように言われました。先生はボーナスとして現金をばらまくのではなく、設備投資など今後の成長に向けた施策に回すべきだとおっしゃるのですが、当時の私は「業績が良くなると税金が増える」という凝り固まった考え方を持っていたので、到底、納得できるものではありません。

Q.結局、どうなったんですか?

若山:意見をぶつけ合っているうちにエスカレートしてきて、あの温厚な先生が一転、「私をクビにしてもいいからこれだけは聞いてください!」と声を張り、身を挺してボーナスの減額を突きつけてきたんです。そのかたくなな態度にこちらもついカッとなってしまい、「若造に会社経営の何がわかるんだ」とまさにつかみ合いの寸前まで行きました。

結局、先輩経営者の意見を聞くうちに先生の判断が正しいのではないかと考えるようになり、ボーナスの支給額を減らしたんです。あとになってより深く経営を勉強するにつれ、先生の発言の意味や、私たちのことを本気で考えてくれていたことがわかりました。それ以降は信頼できるパートナーとしてお付き合いしています。

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税金を多く払ってでも会社を大きくしていこう

Q.先代からの事業承継は順調に進みましたか?

若山:弊社の事業承継はまさに現在進行形です。今も父から私へ株式の譲渡を進めています。事業を引き継ぐのはおそらく一生に一度のことですから、わからないことばかりです。例えば事業承継税制(正式には「非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予・免除の特例」)というものがあります。

私は今の先生も含めて複数の税理士に話を聞いたのですが、この税制を「使ったほうがいい」とおっしゃる方と「使わないほうがいい」とおっしゃる方がいて、正直どちらにするか迷いました。双方にメリットとデメリットがあるからです。今の先生は「使ったほうがいい」と主張され、結局、その意見を取り入れることにしました。税理士によって提案してくる内容がまったく違うので、自社にとって何が良いのかという見極めはとても難しいと思います。

Q.お父様からの代替わりを進めるうえで課題に思うことはありますか?

例えば父は「業績を伸ばすと税金という罰金が増える」とか「借金はしないほうがいい」という考えを持っています。色々な苦労があったからこその考えだとは思いますが、実際に父は利益は抑えて無借金経営をしてきました。

一方で私は税理士の先生とのケンカ沙汰を経て、「税金を払ってでも利益を残して会社を大きくしていこう」「必要な資金は借り入れてでも投資しよう」という方向に考えを切り替えています。父の今までの成功体験が今後も通用するとは限りません。現在、取締役会長を務める父とは意見が対立することもありますが、私は税理士の先生と共に会社の成長を目指していきたいと思っています。

Q.顧問税理士からのアドバイスで特に印象に残っているものはありますか?

若山:「税金を払ってでも、事業を拡大させるように一歩一歩進んでいきましょう」というアドバイスは、まさに目からウロコが落ちる思いで聞きました。その方向に舵を切って以降、3億円内外だった年商が2倍の6億円にまで伸びたんです。昨年はコロナ禍の影響で減収しましたが、それまではずっと右肩上がりでした。

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税理士にはリスクを指摘してくれる存在でいてほしい

Q.税理士に何を求めますか?

若山:税理士の先生には、経営上のリスクを指摘してくれる存在でいてほしいです。例えばこんな話があります。

いわゆる「ガラケー」の携帯電話が流行った頃、ガラケーに特化した施設を増強したメッキや塗装の会社を多く知っています。しかし主役の座をスマートフォンに取って代わられた現在、それらの会社は一転して危機に瀕しています。もしも自分がその立場だったらと考えると背筋が凍る思いがします。

設備投資のタイミング一つ取ってみても、常にリスクは伴います。大きな決断をする時、我々には第三者的な視点でのアドバイスが必要なのはそのためです。

Q.最後に、今後の目標を教えてください。

若山:私たちが暮らす福井県は、有効求人倍率が日本一高い県です。人を雇いたくても雇えない企業が少なくありません。そんな中、私が社長に就任して以降、弊社は業績と連動する形で社員数を着実に増やしてきました。従業員一同、みんなで豊かになっていきたいというのが私の願いです。そのためには技術力をさらに磨くことが必要です。

弊社には東京や大阪といった都市部から、訳アリの依頼が来ることがよくあります。塗装やメッキの難易度が高く、他の塗装会社から受注を断られたケースなどです。ここにたどり着くまでに、おそらくたくさんの会社を経由しているんだと思います。弊社にはそうした難題に応えていく使命があるんです。

おかげさまで無事に使命を果たして納品にこぎつけた時、「あまり有名にならないでね」とお客様におっしゃっていただくことがあります。弊社が忙しくなり過ぎて取引できなくなることを懸念しての発言でしょう。そんな時は塗装屋冥利に尽きるなと思います。塗装・メッキ業界のいわば最後の砦として、今後も鯖江の地でがんばっていきます。

*  *  *

大ゲンカを繰り広げた当時26歳だった顧問税理士が、身を挺して若山さんに伝えたかったのは「会社を成長させていきましょう」という一言でした。その言葉に体の芯を貫かれた若山さんは、経営方針の大転換を図ります。このように、多くの企業経営者との接点を持つ税理士という職業は、とかく孤独になりがちな経営者に対して刺激や気づきを与える存在になり得ます。

ICタグを用いた工場の工程管理など、「身の丈に合ったDX(デジタル・トランスフォーメーション)」にも取り組んでいるワカヤマ。その成長は、社長の若山さんを相手にしても引き下がらず、主張すべきことは主張する"モノ言う税理士"によって力強く支えられています。

取材協力:株式会社ワカヤマ

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