経営者に「気づき」を与えるために実践すべき3つのアプローチ

「いい税理士」が中小企業の業績向上に貢献するために必要なのは、経営者に「気づき」を与え、経営者自らの意思で業績向上に取り組んでもらうことです。前回記事では、なぜ経営者に気づきを与える必要があるのか。その理由についてお伝えしました。

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今回はMikatus(ミカタス)が2019年8月に開催した「『いい税理士』座談会 in 大阪」から、「いい税理士」を志すみなさまに共通していたアプローチ方法について、具体的な内容をご紹介します。

業績向上のヒントは、税理士ではなく経営者の頭の中にある

経営者をやる気にさせるアプローチ。その手法について伺うと、みなさんのお話に共通する3つのアプローチ方法が見えてきました。

▼経営者のやる気に火をつける3つのアプローチ
① 経営者から話を引き出し、経営者自身に答えを出してもらう
② 自分(税理士)以外のものに語らせる
③ 経営者が腹落ちするアクションプランを立てる

①経営者から話を引き出し、経営者自身に答えを出してもらう

経営者に「気づき」を与えるために、「いい税理士」を志すみなさんが口をそろえて重要だとおっしゃることがあります。それは「経営者の話をしっかりと聴くこと」です。

その理由は、中小企業の業績を向上させるためのヒントや解決策は、経営者の頭の中にこそあるからです。そのことを知っているからこそ、「いい税理士」を志すみなさんは、経営者の話を傾聴することを強く意識されています。

藤 本
経営者に考えてもらって、経営者に答えを出してもらう。それが一番大切な事です。答えを導くために呼び水となる問いかけが必要になることはありますが、最終的な答えは経営者に出してもらわなくてはいけません。そのためには、経営者の話をしっかりと聴く姿勢が必要になります。

横 山
20代の頃は、自分がアドバイスをしなくてはという想いが強く、こちらから伝えようとしすぎていました。しかし、それでは上手くいかないことに気づいたんです。経営者は人からあれこれ言われるのが好きではありません。9割は話を聴いて、残りの1割で的を得たことを言えるかどうかが肝心です。

「いい税理士」の役割は、話を聴き、経営者の頭の中を整理してあげること。そして、呼び水となるような問いかけを投げかけることで「気づき」を与え、経営者の思考を手助けすることのようです。

家族や従業員の生活を背負う経営者は、24時間365日、自分の会社のことを考えています。そんな経営者が、税理士だからといって他人の話をすんなりと聞いてくれません。こうした状況で経営者自身に考えてもらうための鍵となるのは、経営者との信頼関係です。

森本 琢磨 様 by Lanchor(ランカー)

森 本
自分の仕事は、経営者との「思い出作り」だと考えています。経営者や従業員の方に信頼してもらうためには、その会社にとって重要な局面を一緒に乗り切ったという「思い出」をお互いに共有することが何より大切だと思っています。

田 中
経営者が腹の内をさらけ出せるようなパートナーになれるかどうかが重要だと思います。ここで溝があるようだと、業績向上に貢献することは難しいです。ときには業務時間外でもコミュニケーションを取ったり、経営者の親族ともコミュニケーションを図り、信頼関係を築くことが重要です。

信頼を寄せている相手の話は、すんなりと入ってきますし、受け入れてもらいやすいものです。経営者に新しい視点や刺激を与えるためにも、信頼関係の強さが鍵を握るということは、常に意識しておかなくてはなりません。

「気づき」を与えるのは、必ずしも税理士とは限らない

②自分(税理士)以外のものに語らせる

しかし、どんな経営者とでも深い信頼関係を築けるのかというと、必ずしもそうは限りません。また、信頼関係を築けたとしても、ある程度の時間がかかってしまうものです。特に、初対面であったり、相手の方が自分よりも年上の場合には、関係性を築く難易度は高くなります。

一方で、早急に対策を始めなければ数か月後には資金がショートしてしまうなど、一刻も早く経営者に「気づき」を与えなければならないケースもあります。それでは、時間をかけて信頼関係を構築している余裕が無い場合にはどうすればよいのでしょうか。

そのような場合に有効となるアプローチが、「自分以外のものに語らせる」こと。その代表と言える手法が、税理士が得意とする「数字」です。

横 山
今の経営状態が続くと資金がショートしてしまうという状況でしたが、経営者には全く危機感がありませんでした。将来の資金繰りシミュレーションを行い、未来の現預金残高の推移が一目でわかるようにしてお見せしました。
「これ、やばくない?」と初めて経営者に火がつき、業績改善のために意欲的に取り組んでいただくことができました。

事実に基づいた客観的な数字を、経営者に興味をもってもらえる形で示すことは、非常に有効なアプローチのようです。

また、客観的な視点から気づきを与えられるのは、数字だけではありません。もうひとつ話題に挙がったアプローチ方法は、自分(税理士)以外の「第三者」に語ってもらうことでした。

小澤 哲二 様 by Lanchor(ランカー)

小 澤
技術力はあるのに価格を上げる自信が持てず、安すぎる価格を顧客に提示してしまう経営者さんを支援していました。そこで、同業の他の経営者をご紹介したところ、業界の話で盛り上がりました。「御社の値段では安すぎませんか?」という同業の経営者の話を受けて、値上げに踏み切る決意をしていただけました。

必ずしも、自分の言動だけで「気づき」を与える必要はありません。その経営者にとって、どのような言葉や体験が刺さるのか。経営者のことを深く知ろうとする観察力と、アプローチの引き出しを増やすことが「いい税理士」には求められるようです。

「次回までにやっておいてください」では経営者は動かない

 ③経営者の腑に落ちるアクションプランを立てる

中小企業の業績を向上させる原動力となるのは、経営者やその会社の従業員に他なりません。「いい税理士」の役割は、こうした原動力に火を付けることです。

経営者には自分が一番会社のことを考えているという自負があります。いくら税理士と言え、「これをやっておいてください」と伝えるだけでは経営者が動いてくれるはずがありません。

経営者に「気づき」を与え、自ら意欲的に動いてもらうためには、経営者が「腹落ちする」アクションプランが欠かせません。

横山 智晃 様 by Lanchor(ランカー)

横 山
決算書や事業計画を難しいと感じる経営者もいます。難しくてわからないと真剣になってくれません。将来のキャッシュの状況など、興味のある事をわかりやすく伝えることで、経営者に火がつきます。経営者は色々と知りたくなるし試したくなる。そうやって着火した時の経営者のエネルギーはすさまじいです。そして、そこからアクションプランが生まれていきます。

藤 本
「普通に考えたらこうですよ!」とか、「そうじゃなくてこうしないといけません!」など、税理士は色々と自分から話したくなってしまいます。けれど、どんな言葉を投げかけたとしても、経営者が腑に落ちていないと動いてはくれません。いかに経営者が腹落ちするアクションプランを一緒に立てられるかが重要です。

経営者のビジョンや目標を共有して、経営者が腑に落ちるアクションプランを一緒に作る。そして、そのアクションが上手くいっているのかどうかをモニタリングするのが「いい税理士」の役割です。何が良かったのか、何が悪かったのか、経営者に問いかけることで新たな「気づき」を生み出し、業績向上へと繋がっていきます。

 

具体的な方法は違っても、みなさんに共通していたことは、経営者にいかにやる気を出してもらうか、どうしたら納得感を持って動いてもらえるかを、日々試行錯誤しているということでした。

中小企業の経営者は個性的で、好みも考え方も十人十色です。これをやれば必ず「気づき」を与えられる、という正解があるわけではありません。創意工夫を継続することが重要です。今回お届けした3つのアプローチ方法が、少しでもみなさまのお役に立てれば幸いです。

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今回の座談会にご参加いただいた「いい税理士」のみなさまの事例の詳細は、別の記事にてお届けしています。ぜひみなさまの事例をお読みください。

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